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第一章 洞窟 6.眷属たち

切りのよい所までまとめて投稿しています

 早速念話スキルとやらを試してみよう。付き合いの長い順と言う事で、最初はスライムのライからだな。


『ライ、聞こえるか?』

『はぃ? ますたぁですか?』

 

 念話を通して聞こえてくるライの声は、幼い男の子のような感じだ。念話なのに声色ってあるんだな。これなら、誰が発言しているのかも判るか。


『そうだ。勝手に名前を付けて悪かったな』

『とんでもなぃです。お腹がすいて死にそぅだったのを助けてもらった上に、名前まで戴ぃて、ありがとぅござぃます』

『そうか。正直なところ、食い物は適当に見つくろって与えたんだが、嫌いなものとか、それを食べたための体調不良とかはないか?』

『全然ありませぇん。むしろ、食べ物をたくさん戴ぃたせぃで、体の調子はすごぉくいぃです』

『そうか。これからもよろしくな』

『はぃっ。ますたぁ』


 ライの話し方は何かたどたどしいな。舌足らずな感じで、本当に幼い子供が話しているようだ。念話でも舌が回る回らないってあるんだな。

 

 次はっと……あれ、キーンの姿が見えないな。スレイにしとくか。


『スレイ、聞こえるか』

『これは、ご主人様。はい、感度良好です』


 声だけ聞くと、スレイは渋い感じの男性だな。


『こちらの都合で勝手に名前を付けて眷属化したような形になったが、構わないか?』

『何を(おっしゃ)いますか。私も他の皆も、じわじわと死にかけていたのをご主人様に救って戴いた身。むしろ、どうやってこのご恩を返したものかと、そちらの方で頭を悩ませておる次第です』

『そうか。では参考までに、お前の持つ土魔法と木魔法のスキルについて説明してもらえるか』

『かしこまりました。私たちの種族はもともと落ち葉などを食べて土に(かえ)す務めを果たしておりまして、その関係で土魔法を取得する者が時々現れます。私自身はこのスキルを持っておりませんでしたが、ご主人様に戴いた食糧を食べるうちに、このスキルが使えるようになっておりました。木魔法については、これまで取得した者が一族におりませんのでよく判りませんが、土質の改善が草木に影響を及ぼす事から得たようでございます』

『やっぱり俺の食い物が原因か……。解った、今後ともよろしく頼む』

『はい。微力を尽くさせて戴きます』


 ふむ。声だけでなく話し方もライとスレイは大分違うな。スレイの話っぷりは、何と言うか、貴族に使える執事って感じだ。セバスチャンとかそういう名前の方が良かったかな。ま、スレイでいいか。あ、そう言えば……。


『スレイ、済まんが聞きそびれた。一体何で死にかけていたんだ? ハイファなんか干からびかけてたし……』

『日照り続きで近くの水場が()れたのですよ』


 次はハイファだな。最近はハイファもすっかり成長して、洞窟――じゃなくてダンジョンだった――の壁を覆うまでになっている。


『ハイファ、どうだ、聞こえるか』

『はい……ご主人様……聞こえます』


 ハイファの声は途切れ途切れの、性別不明の合成音声のようだ。SFのコンピューターの機械音声みたいだな。喋っているのはキノコなのに。


『勝手に眷属化してしまったが、構わなかったか』

『そんな事……ご主人様には感謝しか……ありません』

『妙なものを食わせた形になったが、体調に問題などはないか?』

『大丈夫です……むしろ……力は……溢れるくらいです』

『それでは、手数をかけるがお前の持つスキルについて説明してくれるか』

『はい……私たちの仲間は……落ち葉や朽ち木を分解して……植物が吸収できる栄養素に……還元……します……その関係で土魔法を……栄養素を介して植物の生育に関わる事で……木魔法を……取得します……菌糸ネットワークというのは……私の菌糸を伸ばして……他の菌糸や……他の植物の根と連絡する事で……大地の振動や……風のそよぎ、物音などを……広い範囲で……知覚できます……このスキルは……マスターに戴いたもので……ユニークスキル扱いのようです』

『あ~、ユニーク扱いのスキルなのか、それ。期待できそうだな』

『はい……お役に立ちたいと……思います』


 ハイファの菌糸は洞窟の外にも伸びているようだから、引き籠もっている俺たちに代わって、警戒や索敵を受け持ってもらえれば大助かりだ。


 あとは……キーンのやつ、一体何処へ行きやがった。


『お~い、キーン。聞こえるか~。何処にいるんだ~?』

『あっ、マスター。今、洞窟の外にいます』


 キーンの声は元気な少年のような感じだな。元気なのはいいんだが……。


『外だぁ? 何をやってるんだ?』

『あのっ、僕っ、火魔法を使えるようになって、試してみたくって、洞窟の中で使うと危ないから、外に出て』


 いや、声だけでなく言動もやんちゃ坊主っぽいな。


『あ~、試し撃ちをやったわけか。どうだった?』

『はいっ。凄いです、これっ。レッドボアが一吹きで黒焦げになって』

『……ちょっと待て、キーン。今、何と言った? 何がどうなったって?』

『あ、レッドボア――大きめの猪です。折角なんで入口の所に持って来たんですけど、マスター、入口を広げてくれませんか』

『広げるって、どうやって……あぁ、そうか、ダンジョンの壁だからダンジョンマスターの力があれば出入り口を開く事もできるのか……こうか?』

『あっ、ありがとうございます、マスター』


 いや……目を疑うってのはこういう事かい。二十センチくらいのトカゲが、二メートル近い大猪を引きずって来るって、身体能力強化スキルの恩恵、どんだけだよ。


 こんがりと丸焼けの猪からは、香ばしい匂いが漂っている。そっくりダンジョンに吸収させるのも勿体ないという事で、急遽(きゅうきょ)試食会という事になった。レッドボアという異世界動物の特性なのか、血抜きもせずに丸焼きした割にはなかなか食べられる味で、俺も結構な量を堪能(たんのう)した。



 魔素を(・・・)たっぷりと含んだ(・・・・・・・・)異世界(・・・)の、獣の肉(・・・)を、存分(・・)に。




 追記。ダンジョンの入口は、猪を運び込んだ後で再び狭めておいた。


スレイの台詞に木魔法についての言及が無いとご指摘を戴きましたので、追記しました。(2017.07.13)


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― 新着の感想 ―
[一言] 従魔が日本語話さずにいれば面白そうな小説だと思ったんで残念です。
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