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第百六十一章 精霊からの依頼 2.精霊回廊計画

 人間と契約した精霊は、契約の内容にもよるが、契約者である人間から魔力を補給する事ができるらしい。クロウの脳裏に「寄生虫」という単語が浮かんだが、聞けば人間側にも益のある事らしいし、寄生ではなく共生のようなものかと思い直す。

 移動に話を戻せば、精霊たちは契約した人間とともに移動できるため、馬や馬車に同乗して遠距離を移動する事ができるのだそうだ。馬車の屋根などに無賃乗車を決め込む事もできるが、移動先の魔力が薄いと活動できなくなるため、魔力の供給源としての契約者が必要なのだと言う。



『……それは解ったが、何でそこに俺のダンジョンが出てくる?』

『話はここからじゃ』



 木を伐ったとは言っても、人間たちも――テオドラム以外では――全ての樹木を伐り払った訳ではない。例えば街道筋には緑陰を作るために並木が植わっていたり、一里塚のように適当な間隔を置いて小規模な樹林地が残されていたりする。後者は旅人の野営の便を考えてらしい。また、集落の近傍には里山とでも言うべき森林が残されており、薪や木材、食物などの供給源になっているのだと言う。

 こういった、()わば島状に残存する魔力溜まりを辿(たど)るようにして移動する事はできるのだが……



『……そういうルートは必然的に人間の集落に辿(たど)り着く。精霊たちの目的地とは必ずしも一致しない。目的地に繋がる精霊門とやらを開こうにも、小規模な樹林地では門を開くのに充分な魔力が得られない――そういう事か?』

『そういう事じゃ』


 さて……どうしたものかな。

 気のせいか、爺さまの周りに浮かんでいる精霊の数が、いつもより多いような気がするんだが……。これはあれか? もし断ったら非難の大合唱が起きる流れか? 数の暴力じゃねぇか。


 ……とは言え、精霊だの魔物だのの移動が妨げられるというのは、生態学的にも良くない気がする。俺はそっち方面は専門じゃないが、大学時代に同じ講義を取っていた生態学専攻のやつがそんな事を言っていた。生態学専攻のくせして民俗学の授業なんか受けてた変わり者だったが、出任せを言うような男じゃなかったしな。……ホラを冗談と主張するようなところはあったが……。


 それはともかく、俺のダンジョンを精霊門に使うというのは断じて却下だ。俺の洞窟やクレヴァス、オドラントはダンジョンである事を隠している訳だし、「(こだま)の迷宮」にしてもそれは同じだ。モローのダンジョンにしても、これ以上人目を引くわけにはいかん。その点は「岩窟」も「廃坑」も同じだ。辛うじて使えそうなのがピットだけでは、門としての役割には不足だろう。となると……


『ふむ……精霊たちに必要なのは、要するに移動のための通路なんだよな? その役割さえ果たせば、精霊門でなくても構わないんだろう?』

『それはそのとおりじゃが……お主、何を企んでおる?』

『ご挨拶(あいさつ)だな、爺さま。俺は精霊たちの幸せというやつを第一に考えているだけだぞ?』


 ……おいキーン、()(さん)臭そうな眼で見るんじゃない。


 俺が考えているのは回廊(コリドー)というやつだ。川や並木などのように、小規模であっても連続するビオトープがあれば、生物はそれを伝って移動できた筈だ。そういう目的をもってビオトープを形成する事もあると、あの変わり者が言ってたしな。


『並木じゃと……?』

『あぁ。この世界の街道を見た限りじゃ、全ての街道に並木がある訳じゃ無いようだしな。植わっている場合もショボい感じのものが多いみたいだし、並木や生垣を多少増やしたところで文句は出んだろう?』

『……お主があちこちに出張(でば)っては、木を植えていくつもりか?』

『馬鹿言え。そんな目立つ真似ができる訳がないだろう』


 漠然とだが、腹案というやつはある。緑化運動を是とする集団……この世界では教団とか修道会といった方が良いかもしれんが、それをでっち上げてあちこちを廻らせてはどうか。情報収集の隠れ蓑にも打って付けだろう。人材なら余っているアンデッドを活用すれば好い訳だしな。あちこちを移動するという設定にしておけば、不審を抱かれる前にズラかる事もできるだろう。

 爺さまにそう説明してみたところが……


『ふむ……悪い話ではないが……やはり精霊門も開いてほしいそうじゃ』

『その理由は?』

『少し待て……ふむ……まず、開通までに時間がかかりそうだという事、成否があやふやな事、それと、長距離を手早く移動したいというのが主な理由じゃな』

『……随分と贅沢な事を言うんだな、精霊ってやつは』

『まぁ、そう言うてくれるな。今まで精霊門があった場所が、人間たちの活動の結果消えていったのじゃからな。一方(ひとかた)ならぬ不便を忍んでおる訳じゃ』


 ふむ……回廊(コリドー)回廊(コリドー)として、それ以外に魔力スポットというやつを増やす必要がある訳か。……いや、この場合は復活か?

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