第十七章 魔石 3.天然石
何とか当たり障りのない売り物を入手できた、と、クロウは思っています。この時は……。
ハイファに駄目出しされた以上、ガラス玉を魔石に加工して荒稼ぎという手は使えない。ただの石なら大丈夫だろうが、それならわざわざ地球産を買って持ち込む必要はない。
というわけで、身近で魔石にできそうな石を探そうという事になった。
『で、この地が長い爺さまに聞くんだが、手頃な石に心当たりはないか?』
『ただの石を魔石にしようなんぞと、そんな企ての心当たりはないわい』
『どの石が……魔石化しやすいか……不明という事……ですか?』
『おお、そうじゃ。ついでに言うておくと、魔石になり得ない石を魔石にするようなヘマをするでないぞ?』
『……どんな石が拙いんだ?』
『じゃから、それを知らんと言うとるのじゃ』
埒が明かない掛け合い漫才を打ち切って、現実的な対策を考える。どうも魔石化による荒稼ぎ自体が難しいようだ。実行するにしても、もう少し魔石についてのデータがいる。そのデータが足りない当面は、別の手だてを考えるべきだろう。
『ますたぁ、宝石や鉱石はぁ、どうですかぁ』
『ライか。そう言えば前にも言ってたな』
『はぃ。綺麗な石ならぁ、ありますよぉ』
……いや、ライ、それならそうと早く言ってくれればな……。
ライの言うには、洞窟の下方の谷川で透明度の高い石が採れるそうだ。何度も見かけた事があると言っていた。
『爺さまは聞いた事ないのか?』
『ふぅむ。精霊たちはその手の事に関心が薄いでのぅ』
『村人たちの……話にも……出てきません』
『でもでもぉ、本当にぃ、ありますよぅ?』
あぁ、みんなもライを疑っているんじゃないんだ、気にするな。
ふむ、宝石ではなく、いわゆる天然石ってやつかもしれんな。それなら金銭的な価値はそれほど高くないだろうが、加工次第で付加価値はつけられるか? まずは見に行ってみるか。
ライの案内で谷川に行く。いや、谷川というか、これって半地下の水路じゃないか。地底河川の入口みたいな感じなんだが。
探してみると、確かにライの言うとおり、半透明な石が見つかった。石英とか水晶の類だろうか。色も透明、薄紅、薄紫、薄黄、薄緑、とカラフルだ。加工次第ではいいものができるんじゃないか。
……上手くすれば魔石にも……。
『やめぃ。また何ぞ不穏当な事を考えておろうが』
いつか必ず魔石を作ってやる。
明日はいよいよクロウたちが金策に出かけます。ちなみに新しい章です。




