第百五十六章 新たなダンジョン 4.山賊?
キーンが投げ込んだ爆弾に、揃って呆気にとられる一同。
『山賊……?』
『我々が、ですか?』
全員が一様に戸惑う中に、一人クロウだけはその提案を吟味していたが……
『いや……面白いかもしれんな』
『ご主人様?』
『テオドラムへの商隊を襲って通商封鎖を行なうのは、まぁ、大した打撃にはならんだろう。あの狭い山道では、どのみち大した量は運べんだろうからな。しかし、あそこに山賊が常駐したとなると、そしてそこから出撃して村や民家を荒らしたとすると、討伐隊が編成されるのは確実。つまりは、餌が向こうからやって来るという訳だ』
クロウの説明を聞いて、改めてキーンの提案に感心する眷属たち。
『はあぁ……さすがはご主人様の従魔だわな』
『確かに、戦術的にも旨味のある選択だ』
『きーん、すごぉぃ』
『本当に……能く……考えた……もの……ですね……?』
『えーと……うん、まぁ……』
疑いを仄めかせたハイファの突っ込みに言葉を濁すキーンを見て、あぁ、そこまで深く考えていた訳じゃないんだな――と、事情を察するクロウ。とは言え、有意義な提案なのは事実であった。
『そうすると……ここに配備するのはアンデッド勢という事になるか。山賊風の衣裳を揃えねばならんが……』
はて、山賊風の衣裳など、どこで入手したものかと首を傾げるクロウに向かって、キーンが再び高らかに言い放つ。
『いえ! マスター、ここに必要なのは山賊ではなく、戦闘員ですよ!』
『『『『『戦闘員!?』』』』』
不可解そうな声が揃う中、一人クロウは「何を言い出すんだ、キーンのやつ」という目を向けていたが、何やら思い当たる節があった者はもう一名いたらしい。
『キーン……それは……ご主人様の……書斎の……本棚の……右下隅にあった……本の……事ですか……?』
『『『『『?』』』』』
一同揃って、今度はクロウに疑問の視線を向ける。あぃたー、とクロウが頭を抱える中、なぜか胸を張ってキーンが答える。
『そう! 仮免ラ○ダーの戦闘員』
仮免じゃねぇ!
『正確には……ライダーと……反目する……秘密組織の……戦闘員でしょう……』
……おいハイファ、お前もか。
『そう! それそれ。全身黒い衣裳で黒覆面。腰にチャンピオンベルトを巻いた』
チャンピオンベルトじゃねぇっ……てか、初代かよ……
『奇声を……上げて……襲って来る……訳……ですね……?』
『ヰー!』
……駄目だ……こいつら……
途方に暮れて顔を上げたクロウが見たものは、興味津々といった体でキラキラと瞳を輝かせている配下たちの姿であった。
『……本気……か?』




