第十七章 魔石 1.魔晶石
新しい章に入ります。またもクロウがやらかします。
コアの破片に魔力を流す事でダンジョンコアを復活できたんなら、ただのガラス玉も何かになるんじゃないか? そう、俺の中の悪魔が囁いた。
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活動資金捻出のためドラゴンの魔石を売りに出すという金策案と、そんなもの出したら悪目立ちするという懸念との間で煩悶していた時だった。
要するにドラゴンの魔石だから問題なんであって、もう少し目立たないものなら万事解決だと考えたのは間違ってない。
ドラゴンより少し弱い魔物を狩るとしても、うちの子たちを危険に曝したくないと考えたのも正しいと思う。
ただ、適当な魔石がないなら作ればいい、と考えたのは、今考えてもおかしい気がする。徹夜でハイになってたんだろうか。ともあれそれが発端だった。
『それで、クロウよ。これは何じゃ?』
『大っきな魔石ですねー、マスター。魔晶石ってやつですか?』
『真球でこれほどの透明度となると……魔力を抜きにしても国宝級の値打ちものですな』
『ますたぁ、これぇ、どぅするんですかぁ?』
黙れ、黙ってくれ、俺を追い詰めないでくれ。これでも反省してるんだよ。
偶々部屋にあった直径十センチほどのガラス玉に魔力を流してみたら、魔石と鑑定されるようになったんで、嬉しくなって魔力を追加していったら妙に妖しく光るようになって、気になって再鑑定したらこれだよ。
【固有名称】なし
【種類】理外の魔晶石 宝玉
異世界の物質がこの世界の魔力を得て変化したもの。異なる二つの世界に出自を持つ理外の存在。内包する魔力は強力で、エンシェントドラゴンの魔石に匹敵するか、それを上回る。
【属性】空間魔法 土魔法 水魔法 火魔法 風魔法 木魔法
『お主、これをどうするつもりじゃ? どこぞの王家にでも献上して、褒美に爵位と領地でも拝領するか? よもや手軽に売り払えるなどとは、夢にも考えておらんじゃろうな? あぁん?』
言刃――言葉なんかじゃない。あれは凶刃だ――を連ねて俺を追い詰めにかかる爺さまを宥めるように、キーンとウィンが割って入ってくれた。
『で、でもっ、ほらっ、マスターが魔石を作れるって判ったわけですし!』
『まぁ、おかげで金策については光明が見えてきましたよねぇ……』
『ふん、その点はまぁ褒めてやるわい。じゃが、鑑定で理外云々と表示されるような代物を、みだりに流出させる事はできんぞ?』
『いっそ素直にドラゴンの魔石を売りに出した方が無難かもしれませんな』
『こっちの世界のぉ、石ならぁ、大丈夫ぅ?』
『多分……宝石か何かに……魔力を流せば……できるのでは?……』
『宝石ならそのまま売れば?』
『小さな宝石なら値打ちが低いでしょう。魔力で付加価値をつけないと』
『宝石って、探すのが大変なんじゃない?』
『いやっ、待てっ、待ってくれ。小さなガラス玉に、少しだけ魔力を流せば、大丈夫なんじゃないかと思うんだが……多分……きっと……恐らく……』
尻すぼみに語勢が弱まっていく俺を、皆が疑いの目で見ている。
『売る売らないは……別にして……試してみては……無駄にはなりませんし……』
ハイファの裁決で、安いガラス玉を使って実験してみる許可が下りた。
この件の顛末は明日に。




