第百五十二章 怨毒の廃坑 9.余話
短いので、前話のおまけのような形で公開しています。
ネスを最初に見た時のダバルの驚き方が気になっていたので、事態がある程度落ち着いてからダバルに確認してみた。ネスの姿形を見て随分驚いていたようだが、コボルトとかワーキャットとかはいないのか?
その答えは単純なものだった――曰く、姿勢が違う。
少し専門的な事になるが、人間を例に取ると、背骨は頭骨の真下に伸びている。ところが犬や猫だと、背骨は頭骨の後ろに伸びている。この違いは大きく、コボルトやワーキャットもその特質を引き継いでいるため、立ち上がった時にどうしても前屈みのような姿勢になるらしい。人間のように直立するのは無理なのだという。
ところがネスは偉丈夫のごとく堂々と直立していたにも拘わらず、その頭部は人間のそれではなく獣骨。ダバルのやつは、解剖学的にあり得ない組み合わせをネスに見て硬直したらしい。
ちなみに獣人はどうなるのかというと、彼らは人類の一部が二次的に獣の特質を獲得したものであって、犬やら猫やらの進化の果てではないそうだ。系統的には人族にごく近縁で、人種の違い程度でしかないらしい。無論、婚姻も可能なんだとか。
『自分が驚いた理由がお解り戴けましたか?』
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死霊術師の就職先というのは、冒険者しか無いのか? スキットルの身の上話を聞いていて少し気になったので、うちの連中に聞いてみた。
『口寄せとかの需要は無いのか? 故人の遺志を確かめたいとか』
『お言葉ですがご主人様、それはそれで命の危険があるかと』
『うん? ペーター……何か心当たりでもあるのか?』
『はい。自分も一応貴族の端くれでしたから、遺産や爵位の相続に関するゴタゴタは多少耳にしておりまして……』
あぁ……そういう事か……
『故人の遺志を明らかにされては困る連中もいる、という事か?』
『どちらかと言えば、そういう連中の方が多いでしょう』
『付け狙われるのは間違いありませんね』
『あっ! マスター、自分を殺した犯人を告発したりするんですよね?』
あぁ……そっちもあったか……
『それはそれで、裁判制度が混乱しそうですね……』
『既得権益を手放そうとしない連中が結託して……』
『裁判官が証人の命を狙うのか?』
『いえ……その場合……証人は怨霊の方……なのでは……』
『怨霊が本当の事を言っているのかどうかも、確かめる必要が出てまいりますな』
『死霊術師どうしの弁論合戦ですか……』
うん……収拾がつかなくなりそうだな。




