第百五十二章 怨毒の廃坑 1.不可解な報告
作者が言うのも何ですが、この章は結構グダグダに……いえ、ご自分でお確かめ下さい。
「怨毒の廃坑」のダンジョンコア、オルフからの連絡は、クロウたちを驚かせるに充分なものだった。――まず、状況がまるで解らない。
『オルフ……すまんが、もう一度説明してくれるか? あ、いや、何が起きたのかは一応解ったが……なんでまたそういう妙な事態になったんだ?』
〝廃坑に侵入しようとした死霊術師が、村人たちに袋叩きにされて突き出された〟
成る程、文章の意味は明瞭に理解できる。と言うか、誤解の混じる余地は無い。
しかし――
『そういう事態に至った経緯が、まるで想像できんのだが……』
『はぁ……。少し長くなりますが、村人たちが話してくれた内容を繰り返させて戴きます』
オルフの説明によると、事態はこういう事らしい。
ダンジョン村――正式な名前ではないらしいが、今や世間的にはそれで通っていると言う――に一人の男がやって来て、自分は死霊術師であると名告った。村人たちは珍しい客人を一応歓迎した、いや、歓迎しようとしたのだが……
『……男の目的が、ダンジョンに侵入してアンデッドモンスターを捕獲して使役する事であり、村を訪れたのはそのための情報収集だと判ると……』
『態度を一転硬化させて、男を捕らえた――と?』
『そういう事のようです。ダンジョンのアンデッドは、今や村人たちにとっては守護者のようなものですから……とんでもないやつだとばかりに、村人総出で袋叩きにして、挙げ句に廃坑の入り口前に引き出して、その経緯を朗々と語ってくれました……』
……その光景を想像するだけで、軽く眩暈がしそうだな……
『ダンジョンに生贄を捧げるみたいな感じ? オルフさん』
『まぁ、そうなんですが……生贄というか……その……』
『お白州に罪人を引っ立てて来たような感じ?』
『あぁ! そう、まさしくそんな感じでした』
……うん、俺にもその光景が目に浮かぶな……
『それで……放っておく訳にもいきませんし、骸骨の勇士の一体に頼んで、罪人を引き取って……今はダンジョンの一画に監禁している訳ですが……』
『この後どうしたらいいのか判らなくなって、俺のところへ持ち込んだ訳か……』
『申し訳ありません』
『いや……一応ダンジョンマスターなんだから、俺が対処するのが当然な訳だし、その事自体は別に構わんのだが……』
どうしたもんかね、これは……。
『オルフ、男の訊問は済ませたのか?』
『いえ……訊問できるような容態ではありませんでしたので……』
容態って……
『……ボコボコにされていて、訊問よりも手当の方を優先したという事か?』
『はぁ……いっそ死んでいれば、それこそアンデッド化して事情を訊く事もできたのですが……自分の一存ではそこまで……』
『死霊術師のアンデッドでございますか……』
『見てみたいような……見たくないような……』
『矛盾している……気も……しますが……適役な……気も……』
眷属たちもどうコメントすべきなのか困ってるな。……気持ちは解る。
『しかし……その男は何でまた、この時期に一人でダンジョンに挑もうなどという気を起こしたんじゃ?』
爺さまの疑問については俺も同感だったが、それに対するうちの子たちのコメントが興味深かった。
『仕事が忙しくない冬のうちに――って事じゃないですかぁ?』
『雪解け以降は仕事が入って、自分の一存では動けないでしょうし』
『パーティを組んでいたら尚更でございますな』
『ダンジョンの中はぁ、暖かぃとぉ、思ったとかぁ?』
『でも、アンデッドの方はそれ目当てだから良いとしても、毒の方はどうするつもりだったのかな?』
『そこまで……奥に……入るつもりは……無かったのでは……?』
『ダンジョンの外に出てきたアンデッドを使役しようと考えたとか?』
ふむ。肝心の当人がいないのだから当て推量にしかならんが……一応筋は通ってるな。
『それで……クロウ様、男が目覚めた場合、どうしましょうか?』
どうするって……あぁ……
『相手は一応死霊術師な訳だし、下手にアンデッドを差し向けるのは悪手か……』
『中々面倒な話になってきおったのぅ……』




