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第百五十章 オドラント 4.眷属会議~新たなる戦略指針~(その1)

『……では、続いて抜本的な対策の検討に移る』



 再起動したクロウが新たな動議を提出すると、それまでわいわいと騒いでいた一同が静まり返る。そう言えば、型稽古やトレーニングとやらは、間に合わせの解決策だと(おっしゃ)っていた……



『抜本的な対策と(おっしゃ)いますと?』

『あぁ。要はダンジョンから外部への出動が制限されているのが問題な(わけ)だ。だから、この点をどうにかしないと、本質的な問題は解決した事にならん』



 クロウは各ダンジョンをダンジョンゲートで移動できるが、現時点でダンジョン内に常設されているダンジョンゲートは無い。ヴィンシュタットのオーガスティン邸の地下室には、木箱に擬装したダンジョンゲートがあるが、これもいつもは閉じられている。また、ヴィンシュタット組には緊急避難用に、携帯型のダンジョンゲート――現在の接続先はピット内の転移室――が渡してある。しかしこれらはいずれも、敵国内の諜報拠点というオーガスティン邸の特殊事情を(おもんぱか)った措置であり、クロウの配下がダンジョン間を自由に移動できる訳ではない。

 単なるダンジョンを統率しているだけならそれでも良かったのだろうが、現在クロウの指揮下には三桁を超えそうなアンデッドが控えている。要するに、アンデッドたちの効率的な運用の仕組みが確立されないまま、ダンジョンに寄宿しているのが問題なのである。



『基本的に〝待ち〟のダンジョンと違って、アンデッドたちはダンジョンの外で活動できるからな。その運用を考えた場合、根拠地からの出入りが不便なのは問題がある』

 今までは俺がその都度ダンジョンゲートを開いたり、人目を避けてダンジョンから出入りしたりしていたからな。ここらで事態の改善を図っておかんと。


『それは確かに……』

『抜け穴でも造りますか? (ぬし)様』



 各ダンジョンの出入り口から離れた場所に密かな出入り口を造れば、一応の目的は達せられる。



『それは勿論だが、それだけだと移動の点で厳しい場所も多いだろう。それに、「岩山」や「シャルド」だと、(そもそも)出入り口そのものの増設が難しい』

『確かに……』

(おっしゃ)るとおりですね……』



 モローの二つの迷宮は、比較的近い位置にモローの町があるため、ダンジョンを出てからの移動手段に不自由はしない。ピットもまぁ、少し歩けば街道に出る事ができる。しかし、クレヴァスとオドラントがあるのは荒野のまっただ中。シュレクは――ダンジョンに好意的とは言え――村の真ん前にあるため、真夜中でもないと人目に付かず出入りするのは難しい。シャルドの封印遺跡と岩窟に至っては、駐屯部隊の目の前である。



『つまり、俺の配下にあるダンジョンの中で、曲がりなりにもアンデッドの出入り口として使えるのは、モローとピットだけだ。アンデッド部隊の運用上、これでは大いに支障を(きた)す。クリスマスシティーやアンシーン――忘れがちだが、あれらも一応はダンジョンである――を使えば移動そのものは難しくないが、場所と時間帯の制約は避けられん』



 ここまで言われれば、聴衆一同にもクロウの考えている事が判る――判りたくなかったと頭を抱え込んでいる(じいさま)もいるが。



『つまり……新たな……ダンジョンの……作成を……お考えですか?』

『本格的なダンジョンでなくても構わんから、出入り口程度の拠点をな。そこと各ダンジョンをゲートで繋げば、運用の問題は改善されるだろうと思うんだが……どうだろうか?』

 折角ダンジョンゲートなんて便利なもんがあるんだから、最大限使い倒したい。そのためにダンジョンの増設が必要だというなら、やってやろうじゃないか。

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