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第百五十章 オドラント 2.眷属会議~権利の請願(アンデッド版)~

 その日クロウは、人を使う立場にある者として難しい対応を迫られていた。



『現在の配属に不満が出たか……』

『まぁ、解らなくもありませんよね』

『ずっと引き籠もりですからねぇ、彼ら』



 (そもそも)の発端は、ヴィンシュタットで引き籠もり生活を強いられているカイトが退屈を表明した事に始まった。



 現状でクロウたちがテオドラムの首都に拠点を持つ事の意義は大きい。それは疑いようの無い事実である。とはいえ、野外での荒事稼業を本懐とするカイトたちにとってみれば、退屈至極な任務である事も間違い無い。クロウの立場から見ても、戦闘力と行動力に秀でたカイトのパーティが塩漬けになっている現状が、戦力的に勿体無いのは事実である。

 当面カイトたちを動かす場所の当ては無いとは言え、動かさないのと動かせないのとでは状況が異なる。


 身体が鈍る、腕が錆び付く、愛剣が夜泣きするとまで言われると……



『何か打開策を講じる必要があるだろうな……』



 ()くしてクロウはまたしても眷属会議を招集し、事態の解決に向けて検討会を開いていたのである。何しろクロウが使役するアンデッドは、活動している者だけで既に三桁に達しており、未使用の遺体まで含めると四桁半ばに届こうとしている。彼らの効率的な運用法の構築は、いずれ必要になる筈だ。



『ダンジョンモンスターが参加する内容じゃない気もするんだけど……』

『今更じゃろう。それを言うなら精霊樹(わし)が参加しておるのは、もっと筋が通らぬわい』



 ともあれ、陳情者のヴィンシュタット組を交えての眷属会議が開催された。カイト以外のアンデッドとしては、オドラントからペーターが、ピットからダバルが参加している。



・・・・・・・・



『さて、発端となったのはヴィンシュタットにいるカイトからの陳情なので、今回の会議でも彼らの処遇を中心に話を進めたい。そこで、本質的な問題解決策と、当座の間に合わせ的な対策の二通りが考えられる』

『当座の間に合わせ……ですか?』

『あぁ。こっちは俺がどうにかするつもりだが……要するにカイトたちの退屈を(まぎ)らわせるものを贈ってやれば良い訳だ』

『……一介のアンデッドには過分な対応の気がしますが……』

『何、ちょっとした実験も兼ねているからな。それに、本当に大したものじゃない』

『何を……お考え……なのですか……?』

『あぁ。身体が鈍るって言うんなら、ちょっとしたトレーニング道具なんかはどうかと思ってな』



 オドラント辺りに本格的なトレーニングマシンやジム設備を用意するのが理想的なのだろうが、さすがに費用がかかり過ぎる。ラノベ作家としてのささやかな収入で(まかな)える範囲には収まらない。こちらの世界で入手した金貨や金塊を換金する手もあるのだが……後腐れの無いルートを確立するのが面倒だ。



(まぁ……最初からいきなり飛ばすのもアレだしな。当座はダンベルと縄跳び、パワーリストにパワーアンクルくらいで充分だろう。あとは……サンドバッグくらいなら用意できるかもしれんが……ヴィンシュタットの屋敷に吊り下げて、強度的に大丈夫なのか?)



 天井の強度などを確認しておく必要がある。怪しいようならオドラントのダンジョンにでも設置しよう。



『トレーニング用具……ですか?』

『あぁ。要は身体を動かしたいって事なんだろう? だったら、とりあえずその点での不満を解消してやろうと思ってな』

『それは……以前にお教え戴いた「ラジオ体操」と似たようなものですか?』

『まぁ……あれもトレーニングと言えば……そうなんだろうが……』



 クロウがイメージしているトレーニングとは少し違う。漠然とシャドーボクシングや武術の型稽古、あるいは○リー隊長のブートキャンプのようなものを考えていたのだが……



『型稽古?』

『素振りの事ですか?』



 クロウにとっては意外な事に、冒険者たちも兵士たちも、型稽古というものを知らない事が判明した。素振りはもちろん知っているが、個々の技が連続して攻防のパターンを独習するための、所謂(いわゆる)「型」というものが知られていない。武芸専門の道場などでは教えているのかもしれないが、少なくとも一般的ではないという。

 では、この世界の武術事情はどうなのかというと……

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