第十六章 ドラゴン 1.襲撃
ドラゴンの来襲と、その後の顛末を描いた章の始まりです。
『ロムルスにレムス、この間、ドラゴンがダンジョンコアとか魔石とかを食べるって言ってたよな?』
『ええ、主に若いドラゴンですが』
『うん? 若いドラゴンだけなのか?』
『若いドラゴンは、早く成長するために魔石を漁る事があるんですよ。強いモンスターほど良質の魔石を持っていますから、モンスターと見れば手当たり次第に襲いますしね』
『見境なしなのか? 少しは相手を選ぶとか、思慮分別とか無いのか?』
『クロウ様、若いドラゴンに特有の性質なのですが、自分には隠された強力な能力があると思い込んで、年長者を馬鹿にしたり、言う事を聞かなくなったりして、妙に反抗的・反社会的な言動が目立つようになり、それを注意されるとキレたように暴れるんですよ。大抵この段階で故郷を出奔して、誰彼構わず突っかかるようになります』
中二病かよ!
『あ、マスター、若いドラゴンって、僕たちみたいな小さい生きものも、面白半分に踏みつぶしたりするんで、嫌いです。虫けらどもめー、とか言って』
『始末に負えんやつらだな。こっちに来ない事を祈ろう』
最後の台詞がまさかフラグだったなんて、俺に判る筈がないだろう?
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『ドラゴンを見かけた?』
『うむ、精霊の子が知らせてくれた。一頭が東の方で飛んでいたのを見かけたそうじゃ』
『爺さま、それって……』
『恐らくは若いドラゴンじゃな。はぐれと呼ばれて嫌われておるやつじゃ』
『あいつら、ダンジョンコアを狙う事があるんだよな?』
『コアだけでなく魔石も狙うがの。要は強い魔力を狙うわけじゃ』
『と、すると、さしあたって注意するのはモローの二つの迷宮か』
『まぁ、あそこなら心配はあるまいがのぅ』
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『と、いうわけだ。ロムルスもレムスも注意してくれ』
『クロウ様、実は先日ドラゴンらしきものが上空を旋回していました』
『何っ! それで?』
『はい、そのまま飛び去ったのでご報告しませんでしたが』
『レムスの方はどうだ?』
『同じです。ただ上空を通り過ぎただけです』
『ふむ。気にする必要はないか……』
これがまたもやフラグだったなんて、俺に判るわけはないだろう?
『ご主人様……ドラゴンが……クレヴァスに……接近しています』
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糞っ。防備の堅い迷宮じゃなくて、できたばかりのクレヴァスを狙ったか。畜生のくせに姑息な知恵は回るやつだ。
『クレヴァスの……ダンジョンコアは……覚悟を決めた……ようです……ご主人様によろしくと……』
ふざけるな!!
『総員戦闘準備! 思い上がったドラゴンの若造を潰す!』
もう一話投稿します。




