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第百四十二章 「災厄の岩窟」 3.「災厄の岩窟」

『古生物学者……?』



 クロウは「災厄の岩窟」のマスタールームで、ヴィンシュタットからの通信を受けていた。



『はい。ニコーラムへ行くとの事でしたので、発掘や採集が目的ではなく、ニコーラムから「岩窟」の調査班を指揮するのが目的ではないかと』

『ふむ……ありそうな話だな』

『それで……冒険者ギルドに探りを入れたところ、ニコーラムまでの護衛を募集しているようですが……?』

『成る程……いや、ハンク、応募する必要は無いぞ。危険を冒す程の見返りは無い』

『よろしいのですか?』

『あぁ。テオドラムの意図なら、侵入した兵士や調査班の言動に注意していれば、大抵は判るしな』

『解りました。それでは、自分たちはこのまま待機します』



 ハンクとの通話を終えると、クロウはケルに向き直る。



『ケル、お前の報告は今の話とも関連するようだな』

『テオドラムの兵士たちが新たな坑道を掘り始めたのが七日前。確かに、ハンク殿のお話にあった学者が荷造りを始めた時期とほぼ一致します』



 ケルはテオドラム兵の動きについて既にクロウに報告していたが、クロウの方が沈没船探しに海へ出ていたため、詳しい検討は今日まで持ち越しになっていた。



『テオドラム本部の方で決定が下されたんだろう。採掘場所を変えろとな』

『その判断に寄与したのが、問題の学者という事でしょうか?』

『恐らくな。石炭が出そうにないと判断したんだろう。実際に石炭層は無いしな』

『その判断が下せるだけの知識はあるという事ですね』

『仮にも古生物学者を(ひょう)(ぼう)しているんだ。それくらいの判断はつくだろう』

『それで……この後は如何(いかが)なさいますか? クロウ様』



 ケルの質問に、クロウはしばし腕を組んで考え込む。

 テオドラムがどう足掻(あが)こうと、この地で石炭を得られる見込みは無い。放って置けば良いだけだが……もしテオドラムをからかおうというのなら、その仕込みは早い方が好い。ケルの質問はその点を問うものだった。



『ふむ……からかってやりたい気もするが、正直言って巧いネタが思いつかん。ケル、お前は何か良いネタを持っているか?』

『いえ、残念ながら』

『なら、しばらくはこのまま様子を見るか。丁度好い機会でもあるし、テオドラムの連中に調査を任せるとしよう』



 テオドラム兵の勤勉ぶりは、既にこれまでの実績が示している。この際ダンジョンの拡張を連中に任せるのも良いだろう。



『では、このまま待機を?』

『あぁ。テオドラム上層部がその気になっているんなら、拡張作業――注.クロウ視点――のペースが鈍化する事はしばらく無いだろう。兵隊どもには精々働いてもらうとしよう』

『当分は餌を与える必要は無い、という事ですね』

『そういう事だ』



 のんびりムードに移行しようとしたところで、キーンが爆弾を放り込む。



『マスター、この間出てきた骨なんですけど……』

『あぁ、象の骨か。それがどうした?』

『オドラントで出てきたトレントの残骸みたいに、マスターの死霊術で、復活させる事は、できないんですかぁ?』



 クロウとケルの二名が凍り付いた。

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