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第百四十一章 難破船 4.難破船(その2)

 思いがけないクリスマスシティーの提案に眼をパチクリとさせていた一同であったが、やがて気を取り直したクロウが質問する。



『クリスマスシティー、その提案の根拠とメリットを』

『はい。あの船は、以前の自分と同じ程度には原形を留めているようです。ダンジョン化すれば復帰は可能でしょうし、そうすれば荷物を積み替える手間は省けます』

『ふむ……提案の理由は解った。メリットについてはどう考える?』

『現状で提督(アドミラル)が移動する手段として、自分しかいないのは問題があると考えます。戦力としてはお役に立てていると自負しますが、何分にも自分の艦形はこの世界では異質に過ぎますから、人目を引くのは避けられません』

『少なくとも海上を航走する場合は、帆船の方が人目には付きにくいか……』



 さすがに元は軍艦だけあって、クリスマスシティーの提案は戦術的にも検討する価値があった。現時点で航海の予定は無いとは言え、選択肢を広げておくのは悪い事ではない。条件に(かな)う沈没船など、この先見つかるかどうか判らないのだ。今ある沈没船が、その時まで原形を保っているかどうかの保証も無い。



『それを考えると悪い案じゃないが……』



 単にダンジョン化するだけでなく、移動能力まで持たせるとなると、ダンジョンコアが必須である。他のダンジョンと同様に魔宝玉を使えば良いのだが……



『現時点で手持ちの魔宝玉が無いからな。一旦魔晶石か何かを使っておいて、後で交換するか……』

『いえ、僭越ながら提督(アドミラル)、自分のサブコアをお使い戴ければと具申いたします』

『お前のサブコアをか?』



 クリスマスシティーは全長百八十六メートル、基準排水量一万千八百トンの巨艦である。そんな巨体を自在に動かすのは大変だろうと、クロウは超特大の「理外の魔宝玉」の他に、サブコアとして幾つかの――メインコアより小さい――魔宝玉を幾つか搭載していた。ダンジョン化の当初は「理外の魔晶石」をサブコアとしていたが、後日に性能アップを(もく)()んで魔晶石を魔宝玉に換装したのである。

 クリスマスシティーの提案はそのうちの一つ、直径三十センチほどの魔宝玉を移設してはどうかというものであった。性能に影響するのではないかという懸念に対しては……



『サブコアの一つや二つを失ったぐらいで戦力低下を(きた)すようでは、提督(アドミラル)の座艦を名告(なの)れません』



 と、自信満々に答えていた。



『ふむ……魔宝玉をダンジョンコアに変える事ができれば……洋上航行だけでなく飛行も可能になるか……』



 誰にともなく呟いたクロウに答えたのは――答えてしまったのは――ハイファ。ある意味で、このハイファの言葉がその後の展開を決めてしまったとも言える。



『そう言えば……精霊樹様が……話しておいで……でした……空に浮かぶ……幽霊船の伝説が……あるとか』

『何!? 空飛ぶ幽霊船だと!?』



 そういうタイトルの古い国産アニメを見た憶えがあったクロウは、心躍るそのワードに飛び付いた。難破船の財宝もクロウの中二心をそそったが、幽霊船となるとそれ以上である。まして、それが空を飛ぶだと? しかも、この世界の伝説そのままに?


 クロウの脳内では、この瞬間に幽霊船の復活が決定していた。



『クリスマスシティー、お前の提案を採用する。お前のサブコアの一つをあの船に移設し、それをダンジョンコアとして、あの船をダンジョン化する。お前のサブコアに関しては、後日補填する』

『ますたぁ、新しぃダンジョンですかぁ?』

『またしても移動可能なダンジョンでございますか。果たしてどのようなものになるのか、年甲斐も無くワクワクいたしますな』

『マスター、ダンジョン化しても、積荷はそのままですよね?』

『あ……いや、多分大丈夫だろう。駄目なら他の船を探せば良いだけだ』



 多少の懸念はあったものの、クロウは再び沈没船の再生(レストア)――地球的な意味でのレストアとは大いに異なるが――に取りかかった。

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