第十五章 エルギン男爵領 2.善後策
子供の処置が決まりました。
事情を聞き出した俺たちは、その足で洞窟にとんぼ返りして――飛行術って便利だ――皆との協議を再開した。
『と、いうわけだ』
『お家騒動で命を狙われて逃げ出して来た公爵家の生き残り……ですか』
『あぁ、まさかここまで面倒な話とは思わなかった。話を聞くと、ますますここへ連れてくるわけにいかんから、そのままホルンに預けてある』
『それで、その子をどうするんですか、主様』
『問題はそれだ。こうなるとライの提案は却下だな。ここの領主の顔見知りの子供など、断じて引き取るわけにはいかん。リスクが大きすぎる』
『はぁぃ、そぅですねぇ』
『エルギン男爵のもとへ……連れて行くのが……一番かと……』
『うむ、それしかないじゃろうな』
『眠らせて、連れて行きますか、マスター?』
『どこで目をつけられるか判りませんからな。歩いて連れて行くのは危険かと。ご主人様の飛行術で一気に運ばれてはいかがでしょうか』
うちの子たちに精霊樹の爺さまを交えての相談の結果、とりあえず子供の処遇は決まった。夜のうちに人目を避けて運び、眠らせた子供を領主邸の前に置いてくればいいか。
『門番は……その子の顔を……知って……いるんでしょうか?』
『あ……門前払いの可能性があるのか』
『言われてみれば、門番にまで話が通っているとは考えにくいですな』
『ヴァザーリで獣人に攫われた子供がエルギン男爵邸の門前にいるって、予想もしないでしょうしねえ』
『いや、シルヴァの森とはそう遠くないし、エルフが送り届けたんだとは考えないか? エルギン男爵とエルフたちの関係は特に悪くないと聞いたが?』
ホルンが言うには、エルギン男爵ホルベック卿は亜人融和派の領主で、亜人を保護するよう動いており、領内には亜人もかなり出入りしているという。
『亜人融和派とは言え、エルフたちと直接の交流があるわけではないしのぅ』
『こっそり置いてくれば勝手に誤解するんじゃないか?』
『夢を見るのはそのくらいにしておけ。第一、エルフたちがその子を村に連れて行かなんだのは、その子自身が知っておろうが。ホルンの仕業じゃというのなら、一時森の洞窟に隠れ住んだのは何故じゃ? とっとと連れて行けばよい筈じゃろうが。どう考えても、洞窟で誰かと落ち合った、そういう結論になるであろうが』
あぁ、また俺たちの前科が増えるのか。これ以上目立つのは拙いんだが……。
『ご主人様……国際問題に……なりかねませんから……ホルベック卿が……事情を……王家に話していたとは……考えにくいです……ならば……子供を送り届けても……王国には……伝わらないのでは……』
『うむ。その可能性は多いにあるのう』
この際その可能性に賭けるしかないか……。
『ますたぁ、それでぇ、忍び込みますぅ?』
それまでの煩悶をばっさり切り捨てて、ライがどうすればよいかを聞いてくる。確かに門前放置が駄目となると、邸内に忍び込むしかないか。今の俺なら運動能力も獣人並だし……やってやれなくもないだろう。
子供がどうなったのかは明日以降に。




