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第百二十九章 亜人連絡会議事務局 5.商人セルマイン

少し短いです。

「王都イラストリアに貴族向けの店を出す……? ……なんでこんな事に……」



 砂糖の売り先を探しあぐねて連絡会議に相談したところ、少し経ってから返ってきた返事は、予想もしない程の大事(おおごと)になっていた。しかも指示の時の様子では、自分が王都に店を出すのは確定事項らしい。こっちの都合はどうしてくれると叫びたいセルマインであったが、(そもそも)はこっちが思案に困って連絡会議に丸投げしたのだから、今更苦情を申し立てるのも筋違いである。


 何より、連絡会議の事務局から送られてきた仔細は目の(くら)みそうな内容に満ちていた。これ程の話を前に怖じ気づくようでは、商人としては失格である。



「……腹を(くく)るか……」



 連絡会議はセルマインの進言を容れて、高級品の白砂糖と廉価品の黒砂糖を、それぞれ別の客層に販売する事にしたらしい。黒砂糖の方は、当面は新年祭や五月祭などの大祭で販売するに留めるようだ。砂糖への関心を掻き立てて潜在需要を掘り起こすには、長い目で見る必要があるとの判断だろう。既に砂糖を知っている富裕層に対しては、砂糖を使った新機軸の菓子類で殴り込みを掛けるつもりらしい。


 販売戦略としては確かに納得できる。問題は、自分がその高級品の販売を任されるという事だ。それも王都に店を出すという形で。


 ……正直言って荷が重い。人間の貴族や金持ち相手に、エルフの自分が渡り合わねばならないのだ。しかし、連絡会議が掲げる目標にそれが必要である以上、そして、他にできそうな者の心当たりが無い以上、自分がやるしかないだろう……。



 セルマインはこの日何度目かになる覚悟を決めた……決める度にその覚悟が(くじ)けては再び覚悟を決める……といった事の繰り返しなのだが。



「とりあえず……これが予定している商品案か……」



 肝心の商品については、今現在鋭意開発中とかで、詳細は未定となっている。ただし、砂糖をふんだんに使った菓子という事だけは確定している。砂糖漬けというものが中心になるらしいが……実際どんなものなのかは判らない。酢漬けや塩漬けと同じようなものと考えれば、砂糖を使ったピクルスのようなものだろうか?


 砂糖漬けというものを知らないセルマインは首を(かし)げたが、連絡会議からの指示にはその先があった。



「貴族たちの好む菓子類の種類か……」



 貴族などの富裕層が、現状でどんな菓子を好んでいるのか――味はもとより色や形、大きさ、一日の消費量に至るまでも――調べるようにと言ってきたのである。



「中々に面倒な仕事だな……」



 項目自体は――商人の伝手(つて)を使えば――調べる事はできるだろう。ただし、セルマインがそれらを調べているという事が、関係者の注意を引かない筈が無い。下手をすると、貴族に対する何らかの工作の意図ありとして、しょっ引かれる可能性すら無視できない。マナステラでは自分もそれなりに知られているから大丈夫だろうが、イラストリアだと楽観はできない。



「……誰かに事情を話して協力してもらえれば早いんだが……」



 セルマインはイラストリアの学院に勤務しているエルフの知人を思い浮かべた。

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