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第百二十四章 盗伐 6.ピット

申し訳ありませんが、今回は少し短いです。

『参ったな……そんな事になっているのか……』



 ダバルからの報告を聞いて珍しく凹んでいるのはクロウである。



『私もここまで大事(おおごと)になるとは思いませんで……』

『何だって、ただの霧にそこまで大騒ぎするんだ……』



 クロウたちが疲れた様子で話題にしているのは、グレゴーラムでの空騒ぎの一件である。大元はクロウに責任があるとはいえ、まさか「霧」の中から襲ってくるモンスターに(おび)えたグレゴーラムの「鷹」連隊が、混じりっけ無しの本物の霧にああも過剰反応するとは思わなかった。

 まして、居もしないモンスターに(おび)えた挙げ句、通りすがりの住民に矢を射掛けるなどとは思わなかったし、「鷹」連隊の周章(しゅうしょう)狼狽(ろうばい)振りを不審に思った住民が盗伐部隊の不始末の概要を探り出し、危機感を抱いた住民の一部がグレゴーラムの町を離れ始めているなどとは、まったくもって予想外だったのである。


 クロウたちがこの件を知ったのは、盗伐部隊の全滅を知った「鷹」連隊司令部がどう反応するかを探るために、シャドウオウルを斥候に放っておいた成果である。その用心が功を奏して、グレゴーラムでの騒ぎをほぼリアルタイムで知り得ていたが……同時に予想外に騒ぎが大きくなり過ぎた事に焦っていた。クロウの考えでは、テオドラムの国民が難民化して周辺の国家に押し寄せる事だけは避けねばならなかった。だというのに、あろう事か自分がその引き金を引いた、もしくは引きかけたと知って、大いに凹んでいたのである。



『幸いに、今回は本格的な難民化の前にテオドラムが事態の収拾に走ったようですし、問題にはならないでしょう』

『だが、国あるいは軍に対する住民の信頼は、思った以上に脆弱だ。今後は手の出し方を考えていかんと、本格的な難民化が起きてからでは遅い』



 深刻な表情を隠さないクロウであったが、ここでキーンが一石を投じる。



『でも、マスター、一ヵ所で起きた騒ぎが、そんなに他の場所へ拡がるもんなんですか?』



 意表を()かれてクロウは顔を上げる。そういえば……現代世界と同じような感覚で考えていたが、こちらの世界の情報伝達は地球のそれより確実に遅い。インターネットや携帯電話などという便利なものは無いのだ。まして今回のような事態となると、まず国が率先して情報統制に走るだろうから、一気に破綻が拡がるかどうかは疑問である。



『……言われてみれば……急激な破局(カタストロフ)の可能性はそれほど高くないか……』



 カタストロフというのが何なのかは解らないが、クロウが心配しているような事態が一気に起きるかどうかは疑問であると、従魔たちが口々に語る。元・テオドラムの将軍であるペーターも、従魔たちの見解に大筋で同意する。



『噂というのは案外早く拡がりはしますが、離脱そのものが急速に伝搬する事はそう無いでしょう。過去に疫病が流行った時も、在所を離れずに死んでいった者の方が多かったようですから』

『ふむ……過度の楽観は禁物だが、あまり考え過ぎて手が縮こまるのも問題か』

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