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第百二十一章 「災厄の岩窟」 5.マーカス王城

 象の化石が出土した事で大騒ぎになっているテオドラム王国であるが、国境を接しているマーカスにはそんな事情は知る由も無い。えらく慌てた様子で数頭の飛竜(ワイバーン)が飛んで来た事が判ったのみである。その様子から、岩窟内で何やらどえらいものが見つかったのではないかと察せられるが、それが一体何なのかは皆目見当がつかない。前回殊勲を挙げた読唇術も、今度は「骨」という単語を拾い出したぐらいである。どうも、かなり徹底した口止めがなされているらしい。



「しかし……骨が見つかったぐらいで、何で飛竜(ワイバーン)が飛んで来たというのだ?」

飛竜(ワイバーン)の所属は判明したのか?」

「確たる事は言えんが……王都(ヴィンシュタット)のものではないかという事だ」

「まぁ、飛んで来た方角から考えてもそれが妥当だろうな」

「となると、なぜ骨ぐらいでテオドラム王国が騒ぐのかという事だが……」

「いや待て、逆じゃないか? 国王府が騒ぐほどに重要な骨が見つかった……という事ではないのか?」



 国務卿の一人が口にした仮説に、他の面々が黙り込む。国を揺るがすほどの骨とは一体何なのか。「災厄の岩窟」の前科に(かんが)みると、(ろく)でもない想像しか湧いてこない。



「まさか……今度は黄金の骨が見つかった、などという話ではあるまいな……?」

「いや……それも考えてはみたのだが、それなら会話の中に『黄金』という単語が全く出ないのはおかしい。『銀』でも『銅』でも同じ事だ」



 どうやら最悪の展開だけは避けられたらしい。



「状況を整理しよう。まず判っている事は……」

「恐らくは王都から、数頭の飛竜(ワイバーン)が飛んで来た」

「乗っていたのは何者だ? 確認はとれておるのか?」

「いや。ただ、どう見ても兵士や武人ではなかったという話だ」

「国務系の貴族か?」

「……あるいは、学者だな」

「ふむ……となると、そいつらが来た理由は、少なくとも軍事的なものではない可能性が高いな」



 その意見をしばらく吟味する他の国務卿たち。



「……多少飛躍がある気もするが、検討のための叩き台としては妥当だろう」

「次に判っている事は……『骨』という単語か」

「待て。その点を少し確かめたい。その語を口にしていたのは誰だ? 下級兵士か、下士官か、それとも上級士官なのか?」

「ちょっと待ってくれ……下級兵士のようだな」

「ふむ。すると、だ、問題の骨は、下級兵士が見ても、その重要性がすぐに察せられるものであった事にならんか?」



 今度の沈黙は、先ほどより少し長かった。



「つまり……やつらが異様な骨を見つけたと言いたいのか?」

「可能性はもう一つある。驚くほど大量の骨を見つけた場合だ」



 居並ぶ全員が息を呑んだ。



「まさか……やつらは本当にミドの国の跡を見つけたのか?」

「断定はできんが……可能性の一つとして心に留めておくべきか?」

「いや、先走ってはならん。先ほども言ったが、『黄金』という単語は出てこなかったのだぞ」

「……そうだな。伝説の通りなら、見つかるのは黄金像であって骨ではない筈」

「とすると……」

「何か善からぬものを見つけた可能性が高いようだな……」

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