第十三章 クレヴァス 3.ダンジョン設計(その2)
ダンジョンの設計会議は続きます……ダンジョンの設計とは思えない方向に進みますが。
『では、兵装については後に再検討するとして……次は居住性だな』
『ダンジョンの要目としては画期的じゃのう』
『設計コンセプトが「か弱き者のためのダンジョン」だからな。居住者の意見は重要だ。実際にここに住んでいるクレヴァス組の意見から聞こう』
誰が答えるのか、互いに顔を見合わせていたが、結局はスキンクの一匹が代表して答える事になった。あ、ヴァザーリの作戦では頑張ってくれたし、クレヴァス組にも名前を与えてある。スキンク四匹はアイン――最初に出会った時に代表で挨拶したスキンクで、今話しているやつだ――、ツヴァイ、ドライ、フィーア。スレイター3匹はウーノ、ドース、トレス。スライム三匹はアン、ドゥ、トロー。それぞれドイツ語、スペイン語、フランス語の一、二、三、四をもじった。いいんだよ、前にも言っただろう? 名前なんて判りやすいのが一番なんだよ。あ、ウィンの子供たちはまだ小さいし、数が多いので無名ね。もう少し大きくなったら考えなきゃならないんだが……どういう名前にしようか……。
『……今のところ別に不満はないです。ただ、階層を追加するなら、各階層に水場が欲しいです。あと、サイズの違う者が入ってくる事を考えて、サイズの異なる通路があればいいかなと……』
ふむ。主通路から枝分かれした形で小通路が伸びる形か。いいかもしれない。他にも、身を隠せる割れ目や凹凸だけでなく、隠れ場所になるような大小の構造物を持ち込むか。
『クロウ様、ケイブバットを召還するなら、天井の高い場所も造って下さい。あと、天井自体にも凹凸が必要です』
『水場ですが、一部は水没迷路にしませんか?』
『通路に深い縦穴をいくつも穿っておけば、隠れ場以外に待ち伏せ用にも使えます。ドラゴンの腹を下から狙えます』
『水場ですが、泥沼とか底無し沼はどうでしょうか?』
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『……色々と意見は出たが、要約すると、枝分かれと穴だらけのダンジョンという事になるのか?』
『体の小さな者には棲みやすそうです』
『冒険者には悪夢じゃな』
どうやら、地球で言うビオトープの設計が参考になりそうだ。ダンジョンを造っているのか、保護区を設計しているのか判らなくなるな。しかし、そういう構造をどうやって造ればいいんだ?
『ダンジョン壁になる前に穴を掘った方がいいですね』
だとすると、ダンジョンシードが小さい今のうちか。これって忙しくなるんじゃないか?
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『最後に、ダンジョンシードを成長させる方法についてだが、ロムルスとレムスを復活させてダンジョンに育てた時と同じ要領でいいのか?』
『大丈夫だと思います。ただ、ダンジョンシードが小さいうちは、少しずつ魔力を与えて下さい』
うむ、ではそのように。
次話でダンジョンの造成が始まります。




