表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
508/1814

第百十八章 テオドラム 1.ヤルタ教の消息

「ヤルタ教だと?」



 思いがけないニールの言葉に、クロウは不機嫌そうな声音で聞き返す。



「へぃ。このところ妙な騒ぎが色々起きるってぇんで、先行き不安になった連中が(すが)り付く相手を探してて……」

「そこへタイミング良くヤルタ教がしゃしゃり出てきた(わけ)か……」

「あの宗派は現世利益を(うた)うのが巧みですからね……」



 自分たちがテオドラムを揺さぶった結果、回り回ってヤルタ教の進出を許したとあって、クロウは渋い顔である。



『あれ? でも、マスター、この国って、エルフも獣人もいないんですよね?』



 指弾すべき対象である亜人(ノンヒューム)たちがいないのに、ヤルタ教はどうやって勢力を伸ばしたのか? キーンの疑念は良いところを()いていた。



『確かにな……』



 この国が亜人(ノンヒューム)に対して良い感情を持っていない――国が率先して亜人奴隷を買い上げていたくらいだから、まず間違いは無い――にしても、悪感情を誘導するターゲットとしての亜人(ノンヒューム)がいない現状で、どうやって支持者を(まと)めたのか。まさかとは思うが、亜人(ノンヒューム)に代わる弾圧対象を見つけたのか?



『……これは、一度調べておかんと(まず)いかもしれんな……』



 しかし、調べるにしてもどうやって調べるというのか。



「さすがに俺たちは動けませんよ?」



 生前はヤルタ教が認定した勇者だったカイトがまず辞退する。エルダーアンデッドになって生前とは少し雰囲気が変わってはいるが、注意して見れば面影は残っている。屍体が確認されていない――本人たちがここにいるのだから当たり前である――ために、死亡自体も確定してはいない状況でヤルタ教の前に姿を現すなど、どう考えても(まず)い。



「それは勿論解っている。……同じような理由でテオドラム兵も使えんしな」



 テオドラムの元・イラストリア侵攻部隊のアンデッド――復活させた分だけで一個中隊相当――の中には斥候兵もいるが、彼らの母国であるここで堂々と活動させるのは論外である。


 諜報担当のモンスターや怨霊(ゴースト)はいるが、彼らばかりに頼るのは無理があるし、何より彼らには「聞き込み」という、情報収集の常套手段が使えない。



「……となると、頼めるのは消去法でニールたちしかいないか……」



 冒険者ギルドでの聞き込みを終えたばかりというのに、新たな任務に駆り出すのは気が進まない。そういう表情のクロウを面白そうに眺めつつ――ダンジョンマスターで自分たちの使役者(マスター)だというのに、気配りの過ぎたご主人だ――ニールは任務を快諾した。



「ヤルタ教関係者そのものに当たるのではなく、信者や支持者から聞き込むようにな」

「解ってまさぁ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ