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挿  話 知恵の輪

今回は挿話です。明日からは舞台を変えて本編に戻ります。

「ハク、シュク、元気にしてたか?」

「「はい!」」



 久しぶりにヴィンシュタットの拠点を訪れたクロウは、なぜか上機嫌でハクとシュクに声を掛ける。その様子を見て微かな不安を感じるアンデッドたち。



「あの……ご主人様、ハクとシュクが何か……?」



 恐る恐るお伺いを立ててきたハンク――カイトのパーティのリーダーで壁役――に顔を向けると、その懸念を機嫌良く(ふっ)(しょく)するクロウ。



「何、二人にちょっとしたお土産(みやげ)をな」

「「お土産……ですか?」」



 自分たちへの土産と聞いて驚きつつも、期待に顔を輝かせる二人。クロウは気付いていないようだが、(しゅ)(すじ)の者が使用人に土産を持って来るというのは普通ではない。そんな事には気付きもせずに懐から取り出したのは……太い針金が奇妙な形に絡み合ったもの。


 知育玩具としても名高い「知恵の輪」である。


 見た事も無い品物に驚きつつも、何に使うのか判らない分だけ期待も興味も高まってくる二人。そして……小さな兄弟を見守る大人たちも、その例外ではなかった。



「ご主人様、何すか、これ?」

「これは『知恵の輪』といってな……あぁ丁度良い、カイト、この繋がった輪を外してみろ。ただし、力任せではなくて、それこそ子供にでも出せる程度の力加減でな」

「え? ……いや……あれ……?」



 意味が解らずに悪戦苦闘しているカイトを尻目に、クロウは別の知恵の輪をハクとシュクに一つずつ与える。



「カイトがやっているのとは違うが、やるべき事は同じだ。やってみろ」



 謎の玩具(おもちゃ)を手渡された二人は、キラキラ光る眼でそれに取り組む。



「他の者も試してみろ。難易度は様々、解き方も同じものは無いぞ。いいか、これは『知恵の輪』だ。力で解けるものではないぞ?」



 クロウの挑発に乗って、恐る恐る手を伸ばすアンデッドたち。最初に外したのは、意外にも庭番のパウルであった。



「外れた!」

「嘘!?」

「どうやったのさ!?」

「おめでとう、パウル。次はそれをもう一度繋げてみろ」

「え? えぇ?」



 どうやら偶然だったらしく、目を白黒させるパウル。



「あの……ご主人様、外した後でもう一度繋げなきゃ駄目なんすか?」

「そりゃ、再現性が無いようでは知恵とは言えんからな」

「「うへぇ……」」



 げんなりした様子のカイトとバートであったが、次に上がった歓声に態度を改める。



「あっ! 外れた……そうか、解った!」

「兄さん、凄い!」

「お、ハクは解き方が判ったか?」

「はい! ここを、こう、少し(ひね)ってやるんですよね?」

「外すのも繋ぐのもできたようだな。おめでとう、ハク。だが……他の輪も同じ手順で外せるとは限らんぞ。数だけはあるから、暇つぶしに挑戦してみるんだな」

「はい!」

「シュクも頑張ってみろ。それはそんなに難しくはない筈だからな」

「はい! 頑張ります!」



 幼い兄弟が顔を輝かせている後ろでは、大人の()(けん)にかけてと力む者たちがいた。



「……いや、だから、ここをこうやって……あれ?」

「そうじゃねぇだろ。反対だ、反対」

「え? ちょっと待ってよ……何でここで引っかかるのよ!」

「お! そうか、ここをこうやって……やった!」

「あ、パウルさん、できたんですね……」

「……おい、カイト、お前勇者だろうが。ちったぁ意地を見せろ」

「バートこそ斥候だろうが。罠の解除は本職じゃないのかよ?」

「うむ……ここをこう……いや? ……こうか……」



 ヴィンシュタットのオーガスティン邸は今日も平和であった。

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