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第百十三章 マーカス 1.国境監視部隊(その1)

 クロウたちやイラストリア王国がテオドラムの不可解な態度について議論していた日から四日後、マーカスの国境監視部隊でもテオドラムの動きを巡って議論が繰り広げられていた。マーカスから見たテオドラムの動きを追ってみると、以下のようになる。


 ・急にダンジョン攻略に熱心になる

 ・ダンジョンから金鉱石などを運び出した様子が無い

 ・にも(かか)わらず兵力を増員している



「単純に考えれば、テオドラムの連中はダンジョン内に存在する重要な物資の在処(ありか)を知ったのでしょう」

「それを探すために兵士をつぎ込んでいると?」



 副官の見解に概ね同意しつつも、状況が今一つ納得できないファイドル代将が問いを発する。



「それは何だと思う?」

「ミドの国の伝説をお聞きになった事は?」



 言ったのが副官でなかったら正気を疑っていたようなワードを耳にして、代将がじっとりとした視線を巡らせる。



「そういう風説が世間を騒がせている事は知っているが?」



 ミドの黄金郷伝説と「災厄の岩窟」の暗合っぷりが話題になっている点では、マーカスもまた他の国々と()(いつ)にしていた。



「そう頭から馬鹿にしたものではないと思います。少なくとも、奇妙なくらい(ひょう)(そく)が合っているのは事実ですから」

「だが、それは伝説を下敷きにして(わる)巫山戯(ふざけ)を仕掛けた場合も同じだろう? というか、ここのダンジョンはそういうものだと思っていたが?」

「そう断定できるだけの根拠はありません。それに、事実がどうこうという話ではなく、テオドラムが何を考えているのかという事が問題でしょう」

「テオドラムのやつらが風説を本気にしたと?」

「本気にするだけの根拠を得たのかもしれません」

「それがダンジョンマスターの(わる)巫山戯(ふざけ)でないと思う理由は?」

「ダンジョンマスターがテオドラムだけ(・・)(わる)巫山戯(ふざけ)を仕掛ける理由が見当たりません。我々にはそれらしい手掛かりは与えられていないのですから」

「……あのテオドラムの事だ。どこかでダンジョンマスターの怒りを買ったのかもしれんぞ?」

「確かに、その可能性も否定はできませんが……」



 半分は正解である。表立ってこそいないが、クロウは徹底的にテオドラムを敵視しており、事あるごとにテオドラムが不利益を被るように動いてきた。ただし、今回の一件については全くの想定外であり、(むし)ろクロウの側が後手に回っているのが実情なのだが。



「……まぁ、テオドラムの馬鹿どもがダンジョンマスターに(たぶら)かされたというのは納得できる話ではあるが……だとしたら、やつらは本気で黄金郷を探しているという(わけ)か……?」

「とは、限りませんが」

「何だと!?」



 有能な副官というのはどこでも似たような性格になるのか、どこぞの国王執務室で聞いたような問答が、ここでも繰り広げられている。



「一つ奇妙な事があります。彼らはなぜ金鉱石の(たぐい)を回収しないのでしょうか? 岩窟内にはあちこちに金鉱の露頭がある筈です」

「……ミドの黄金郷なんて大物を前にしたら、()(くさ)(がね)なんか気にならないんだろうよ」

「そう。彼らはなぜ、そこまでの確信を抱けるのでしょうか?」

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