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第百四章 趣味の創作ダンジョン 3.新ダンジョン設計会議(その2)

『……餌を何にするかは後にしよう。どういう具合に(おび)き寄せ、引き込むか』

『引き寄せ方と引き込み方、ですか?』

『あぁ。餌が何であれ、それがある事を知らしめ、更に奥へと招き寄せるには、あるいはより多くの人間を呼び集めるにはどうするか』

『ダンジョンマスターらしくなってきおったのぅ……』

 ほっとけ。


『あれ? でも、マスター。人がやって来ないダンジョンを造るって、言ってませんでした?』

『いやな、場所が場所だけに軍が睨んでいて、冒険者が入るのを妨害するだろ? 入りたくても入れないダンジョンって、嫌がらせとしては最高じゃないか?』

『うわぁ……』

『さすがクロウ様です……』

『あの……その場合、マーカスも同じストレスを受ける事になりますが……』

『……隣人(テオドラム)のせいで余計なストレスを受ける(わけ)だ。精々テオドラムへの反感を募らせてもらおう』

『気の毒ですぅ』


 ……うん……俺も少しそう思う。


『で、客引きの方法だが?』


 そう言ってやると全員がう~むという感じで考え込んだ。俺も一緒に考えてみるが……これって、要するにゲームデザインと販促コンセプトの決定だよな?


 中毒性の高いゲームはどういうものか考えてみると……比較的単純な作業で報酬を得て、進むにつれて段々難度と報酬が上がり、達成感を得るもの……かな? モグラ叩きのように、適宜失敗する要素も不可欠だろう。失敗の理由が判るなら、再チャレンジも……って、そうだよ。再チャレンジできる事、少なくともそう思わせる事が、リピーター確保の上で重要だ。解ってきたぞ。鍵はリピーターだ。



 クロウが少しずれた視点で誘致の方法を考えている横では、従魔たちが、これまた別の視点で議論を進めている。



『……あ~、親鳥が巣から敵を引き離す時にやる、あれ?』

『そぅ。弱ったふりしてぇ、少しずつぅ、おびきよせる』

『傷ついて飛べない振りをして、届きそうで届かないぎりぎりの距離を維持して、天敵を自分の方に引きつけるやつですな』

『いわゆる囮ですよね』

『有効な……方法かも……知れません』



 ダンジョンコアたちとクリスマスシティーも、精霊樹を交えて念話で討議を進めている。



『要するにじゃ、ぱっと見ただけで冒険者の注意を引きつける、そういうものが必要という事じゃ』

『やはり黄金が一番のような気がしますが……』

『黄金が適切かどうかは後にして、一回は「餌」を持ち帰らせる必要がありますよね』

『つまり、比較的簡単に持ち帰れるものでなくてはならない』

『これに、一見して判るという条件がつくわけですか……』



 少し離れた位置では、ダバルとペーターが口頭で議論している。



「……金銀財宝が得られるダンジョンというのはそれなりにあると聞く。だが、それを国家が独占しようとした例はほとんど無いのだから、量さえ配慮すれば、国家間の争いにはならんと思うんだが……」

「この場合、両国の国境線上というのが問題だろう。実利よりも国としての(めん)()で動かざるを得ない事もある筈だ」

(めん)()で言うなら(むし)ろ、自国の冒険者に危害が及んだ場合だろう。双方それが解っていれば、決定的な事態は避けようとするのではないか?」

「冒険者がどれだけ欲に駆られて動くか……その辺りが鍵か」

「むぅ……確かに金というのは訴求力が強いんだが……」

「いっそ、贋金を混ぜるか? 『愚か者の金』と呼ばれる金属があったろう?」

「あぁ、黄鉄鉱の事だな。キラキラしいが、見かけほどの価値は無い。……なるほど、正真正銘の黄金と、一見紛らわしい黄鉄鉱が混在する……」

「欲望を(あお)りつつも、過熱は避けられるかもしれんな……」



 再びクロウに目を戻すと、いつのまにか具体的な設計案の検討に入っていた。



(テオドラムの国民はほとんど魔力を持たない。マーカスの冒険者がどうなのかは判らんが、仮にイラストリアと同程度に魔力持ちがいた場合、魔力の有無が攻略の鍵になるようなダンジョンでは、テオドラムとマーカスで攻略の進度に差がつく。……火種になりかねんな。魔力が関係するようなギミックは外すか)


(それと……今回は軍の侵入は考えなくても良いだろう。冒険者だけが対象なら、それほど大人数にはならんだろうし、仮に人数がいても、組織的な動きは期待できん。なら……部隊の分断を図るようなギミックも意味がないな……)



・・・・・・・・



『よ~し、大体話は(まと)まったか? それじゃあ、各班発表してくれ』

『『『は~い』』』



 大勢の頭脳が参加する事で、ダンジョンの設計は少しずつ形になっていった。

次回は挿話になります。

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