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第十一章 ノーランド 1.国境監視所

安穏な引き籠もり生活を目指して、クロウの次なる一手が動き出します。

 イラストリア王国の国境の北半分は、天然の要害たる山脈に守られている。ところが王国の最北部には、この山脈が途切れる場所がある。そこは当然の事ながら交通の要所であり、と同時に、戦時には敵の唯一の侵攻路となる筈の場所であった。そのため、そこには出入国を監視するための関所があり、一個小隊からなる国境監視部隊が常駐していた。そして国境の後背に位置する町ノーランドには、この部隊の原隊である一個中隊が配備されていた。



「よーし、()が落ちる前に関所の門を閉めるぞ。通し残した者はいないな? それじゃ、閉めたら当番兵を残して兵舎へ戻れ」

「兵長、今夜の晩飯は何ですかね?」

「まったく、お前は食い物以外に興味はないのか?」

「そうは言っても兵長、こんな場所じゃあ、口説こうにも女っ気がありませんからね。男を口説くよりは健全でしょう?」

「気色悪い事を言うな。隣国の情勢とか、商人の動きだとか、そういった方面にちったぁ気を回せと言ってるんだ」

「南と違ってこっちの関所じゃ、通るのは小規模の行商人ばかり、それも数日に一人来ればいいところじゃないですか。隣国モルファンの動きにも異常はないんでしょう?」

「だからと言って気を抜くな。いつ何が起こるか判らんのだぞ」



 そう。何が起こるか判らない。後になって彼らはこの言葉の妥当性を痛感するようになり、そうして中隊本部、および王国上層部は、この言葉を少し変えた形で実感する事になる。曰く、「何が起きたか判らない」と。



『マスター、兵舎の周囲を巡回している歩哨(ほしょう)を除く全員が寝たようです』

『よし、兵舎近辺をダンジョン化して隔離する。隔離してしまえば他所(よそ)に異常は気取られんだろう。キーンは直ちに離脱しろ。離脱を確認次第、ダンジョン化を実行する』


 今回の制圧作戦においては、「壊れたダンジョン」のスキルを最大限利用する事にした。国境への移動はダンジョン壁の能力を(まと)った上での飛行を採用した。移動距離が心配だったが、俺の魔力はどうやら人一倍多いようで、途中一回の休憩を(はさ)んだだけで、その日のうちに国境に辿(たど)り着く事ができた。


 兵舎の制圧もダンジョン化によった。「壊れたダンジョン」のスキルは、オープンな場所であってもダンジョン化を可能にする。兵舎のみならずその周囲を巡回している歩哨も含めて隔離したが、歩哨(ほしょう)の一人が一瞬だけ警戒したのを除いて、気取られる事なく捕獲できた。あとはダンジョンマスターとしての能力で、隔離した空間に麻酔ガスを流し込んでやれば、はい制圧完了。あ、ガスは地球に戻った時に、これも「壊れたダンジョン」のスキルを使って病院から盗み出した。あそこは以前からよくない噂のある病院だったからな、もう一つ二つ余罪が増えても構わないだろう。


 兵舎の制圧が終わったら、同じ手順で関所の当番兵を無力化しておく。監視兵を兵舎に運んだ後、証拠隠滅のために関所のダンジョン化は解除した。

 兵舎の中を家捜しすると、連絡用の魔道具があった。なるほど、非常時にはこいつでノーランドの中隊本部に連絡するわけか。


『ますたぁ、この後はぁ、どうしますぅ?』

『番兵さんたちにゃ恨みはないしな。殺すのも何だし、必要な情報を得た後で解放するさ。ただし、こちらの情報は何一つ渡さない』


 入手には少し苦労したが、地球からは自白剤も持ち込んである。こいつを使って訊問してやれば、偽りのない情報がとれるだろう。訊問の際には仮面を(かぶ)り、ヘリウムガスを使って声も変えておく。聞くだけの事を聞いたら再び眠らせて、どこか適当な場所に置き去りだ。兵舎は戸締まりをしてダンジョン化を解除、入出国者からの通報が遅れるように関所は開いておこう。


 さて、やる事は多いし、てきぱきやらんとな。

もう一話投稿します。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 余罪は増えないだろう?黒い噂があろうがなかろうが 窃盗を犯したのは主人公。
[一言] スキルを使って病院から盗み出した。あそこは以前からよくない噂のある病院だったからな、もう一つ二つ余罪が増えても構わないだろう。 …うああw噂で証拠もないのに余罪が増えてもいいだろうって? …
[一言] 自白剤と言う薬物は存在しません。
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