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第一章 洞窟 3.再び洞窟へ

二話投稿(予定)の一話目です。

 準備を整えて再び洞窟へ向かう。何やら予感めいたものがあったので、今回は食料と水をやや多めに、種類も増やして持って行く。前回スライムを見つけた場所の先を調べるのが目的だ。


 洞窟内の様子は前回来た時と変わらないようだ。前回到達点までは少し急いで進み、そこからゆっくりと探索を再開。ちなみにスライムも一緒である。洞窟に入った時に一瞬体を震わせたが、その後は何ともないようで安心する。


 考えてみれば、スライムがいるくらいだから洞窟があるのは地球じゃない。未知の細菌とか防疫とか心配するべきなんだろうが、なぜか全く気にならない。理性は危険を訴えているが、心の底で何か確信のようなものがある。

 

 前回のスライムポイントから少し先へ進むと、今度は一匹のトカゲと、ダンゴムシかワラジムシを少し大きくしたような――フナムシっていうのか、あれに似ている――生きものが見えた。トカゲは頭から尻尾の先まで二十センチくらい、フナムシもどきは十センチくらいか。ゆっくり近寄ってみるが、逃げるでもなくこっちを見ている。


 前回のスライムの事もあるので、地面の窪みに水を少し入れてやると、近寄って飲んでいる。持ってきたソーセージを少しちぎって地面に置いてやると、しばらく臭いを嗅いでいる風であったが、やがて二匹とも懸命に食べ始めた。この洞窟、餌らしいものがまるで無いようだから、きっと腹を空かしていたんだろう。地面に置くのも待ちきれないようで、終いには手から直に食べるようになった。いや、スライム君、君にもちゃんとあげるから落ち着きなさい。


 スライムを加えた三匹に水とソーセージ、ついでにバナナを与えてやったら喜んで食べている。その様子を眺めつつ洞窟の先に目をやると、隙間から光が射しているのが見えた。お食事に夢中の面々をその場に残して、光の射す方に進んでみる。


 光が射し込んでいるのは岩壁の小さな割れ目。長さは上下に三十センチほどあるが、幅はせいぜい五センチくらい。スライムたちはここから洞窟に潜り込んだんだろうが、俺が出て行くのは無理そうだ。


 地面に目をやると、半ば干涸らびかけたキノコの菌糸のようなものが見えた。水筒の水をかけてやると、水を吸ったかのように膨らみはじめる。じっと見ていると、菌糸がそろりそろりと水の方へ流れるように寄って行く。菌糸でなくアメーバーのような生きものか、いや、粘菌という奴か。それならばとソーセージとバナナの残りをそばに置いてみると、少しずつ流れるように寄って来た菌糸がやがて表面を覆った。時間をかけて吸収するんだろう。


 復活した粘菌もどきをその場に残して、スライムたちのところへ戻る。もう食事は済んだようで、三匹ともこちらを向いて待っているかのようだった。部屋に連れ帰りたいが、俺の身に万一の事があった場合を考えると、やはりこの洞窟に残しておいた方がいいだろう。その代わり、数日おきに餌や水を持ち込む事にしよう。


「少し名残惜しいけど、ここで待っててくれるか。二、三日うちにまた餌を持ってくるからな。約束する」


 俺の言葉がわかったわけでもないだろうが、スライムたち三匹は名残惜しげにこっちを見た後、それぞれ壁の隙間に潜り込んでいった。少し寂しいような、聞き分けてくれて愉快なような、そんな気持ちで洞窟を後にした。


 今度来る時は三匹用に餌と、粘菌のための肥料か何かを持ってこなくちゃな。

……粘菌って、一体何を食うんだろう。


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― 新着の感想 ―
[一言] ゴミの日に出す感覚で、捨てるゴミを持ってきたらいいのでは。
[一言] 二、三日(の)うちに
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