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第八十九章 エメン追跡隊 3.ニル

少し短いです。

「隊長、エメンの件は結局どうすんですか?」

「探すに決まっているだろう? 俺たちが何のためにここまでやって来たと思ってるんだ?」



 イラストリア王国の勅使がテオドラムの王都ヴィンシュタットに向かっている頃、ニルに待機したエメン追跡隊のメンバーは、自分たちがとるべき行動を模索していた。



「けど……この町で聞き込める事はあらかた聞き込んじまいましたぜ?」



 追跡隊に選ばれた古株の兵士がそう言った。この男は冒険者の斥候上がりで、諜報活動には欠かせない技術を身に付けた腕利きである。



「まぁ……それはそうなんだよなぁ……」



 部下の言うとおり、この町での聞き込みはほぼ終わった。時折やって来る商隊からの聞き込みと連絡待ちの人員は必要だが、追跡隊十五人が全員でかかるほどの仕事でもない。手持ち無沙汰なのは事実であった。



「ふむ……エメンがヴァザーリからこの国に逃げ込んだとして……」

「あ、そっちの話にいくんすか」

「一応、表向きの仕事だからな……で、そうした場合、どのルートが一番怪しいと思う?」

「そりゃあ、ヴァザーリから直接マルクトに行く筋でしょうよ。人通りが多い分、紛れ込む事ができる」

「その反面で、自分を見知った者に出会う機会も増えるぞ?」

「……てぇと、隊長はそうお考えなんで……?」

「いや。ただ、俺たちがここにいる以上、エメンを捜すにしてもそういう想定の(もと)でやるべきだろうと思ってな」



 成る程、さすが士官学校出は大したものだと、元斥候の古参兵は素直に感心した。



「となると……エメンの奴ぁこっそりとニルの町を抜けたって考えられますか」

「他に抜け道みたいなものはないのか?」

「……小さな()(みち)ぐれぇならあるかもしれませんな」

「俺は明日にでも冒険者ギルドへ行って、そういう()(みち)の事を聞き込んでこよう」

「本気でやるつもりですかぃ?」

「潜入ルートを洗い出しておくのは重要だろう?」

「成る程……そういう事ですかぃ」

「ああ。お前たちは補給の観点から、エメンの行動距離を見直してくれ」

「……補給……ですか?」

「農家などから安易に食物を仕入れれば記憶に残る筈だ。人目を避ける以上、そんな手段をとるとは思えん。となると、盗むか自力で狩るか……入手の手段も機会も限られる筈だ。なら、行動距離にも制限がかかるだろう」

「しかし……エメンてぇ奴は自力で動物を狩ったりできるんですかね?」

「有能な同行者がいるかもしれんぞ? それに、木の実を採るくらいなら子供にでもできるだろう……それで思いついたが、子供から入手する可能性についても検討してくれ」

「へぇい。一丁、やってみますか」



 エメンという仮想標的の捜索に向けて、当面の行動計画が立てられた。

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