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第八十五章 テオドラム 3.資金源

 内務卿の提出した問題が一通り審議された頃合いを見計らって、今度は財務卿が話を切り出す。



「ラクスマン卿、マンディーク卿、砂糖の件についてお尋ねしたいのですが……」



 ファビク財務卿の質疑に対して、まずラクスマン農務卿が答える。



「作付け面積の増大については、予備として控置しておいた畑を使えば対応できる。概算で二割程度の増産は可能だろう。少し密植すれば三割までいけるかもしれん。それ以上の増産となると、畑の準備から始めねばならんので、早くても来年……いや、再来年以降になるだろう」



 ファビク財務卿は一つ頷くと、今度は視線をマンディーク商務卿に(めぐ)らす。



「備蓄しておる砂糖の全てを売却するのは、無用な値崩れを起こすだけで意味がない。三ヵ月以上の時間をかけるという前提で、三割程度の増量が妥当であろう。早急に手筈を整えたとしても、出荷調整に一月半から二月はかかる見込みだ」

「マンディーク卿、五月祭に間に合わせる事は可能ですかな?」

「五月祭か……できぬ事もなかろうが」

「是非ともお願いしたい。それと、五月祭向けのエールの量も少しばかり増やして戴きたい」

「ふむ……エールの方は何とかなろうよ。幸い醸造所と店が離れておらぬしな」



 この世界のエールは保存性が悪く、味を損なわずに貯蔵できるのは精々(せいぜい)二週間が限度であった。なので、テオドラムは大きな消費地の近くに醸造所を設け、安価な余剰作物を原料として低価格でエールを供給する事に成功。幾つかの交易都市に限ってではあるが、そこのエール市場をほぼ独占していた。例えばイラストリア王国のヴァザーリやリーロットにはマルクトが、サウランドにはグレゴーラムが、それぞれエールを安く供給して外貨を稼いでいたのである。

 これらの交易都市が賑わう五月祭にエールを多めに供給して資金を得ようと考えるのは、財務卿として当然の判断であった。


 エールの増産は可能と言ったマンディーク卿であったが、商務教として釘を刺しておく事も忘れない。



「だが、そのためには原料となる小麦が必要。既に割り当てられた小麦を使い切る事になった場合、追加は貰えるのかな?」



 確約を迫られたファビク財務卿がラクスマン農務卿にちらりと目を遣ると、農務卿は黙って(うなず)いた。どうせ他国との取り引きが(とどこお)って小麦の量はだぶついているのだ。割り当てを増やすくらい何でもない。



「その件については、ラクスマン卿とも相談の上になりますが、間違いなく取りはからいましょう」

「頼むぞ。秋以降のエールが飲めんなどとなったら、暴動ぐらい起きかねん」

「承知しました」



 この件はこれで問題ないと判断した財務卿は、今度は国王に向き直る。



「陛下、(かね)てより計画しておりました件を、前倒しで実行する事を具申いたします」

「貨幣の(かい)(ちゅう)、か」


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