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第八十一章 テオドラム 6.イラストリア王城

本日公開分の二話目です。少し短いです。

「毒持ちの鉱山がダンジョンに化けて、二個大隊が轟音と共に消えたかと思うと、今度は対モンスター戦の講義と来やがった。一体(いってえ)あの国じゃ何が起きてるんだ?」



 (とん)(しょ)でぼやいているのはイラストリア王国軍第一大隊長にして、王国軍の総指揮官を兼任するローバー将軍である。そして、そのぼやきに答えるのは王国軍の剃刀(かみそり)と呼ばれてローバー将軍の副官を務めるウォーレン卿である。



「確認できている事象の全てがモンスター絡み、あるいはその可能性がある案件となると、Ⅹの関与を疑いたくなりますね」

「やっぱりそうなるかよ……しかし、だとしても何でまたⅩの鉾先(ほこさき)がテオドラムに向いたんだ?」

「さぁ……まさかテオドラムにも、ましてやⅩにも聞けませんし……あの国では情報収集がしにくいですしね」



 諜報活動の基本は、身分を偽って潜入し、地道な聞き込みや調査を続ける事にある。しかしテオドラムは国内の商業活動が活溌でないため、商人に化けて住民から情報を仕入れるという定番の手段をとりにくい。農産物などは一括して国が買い上げ、勅許を受けた問屋を通して売買しているため、裏取引を持ちかける事もできない。テオドラムが輸入している品も、その多くがテオドラムの商都に集められ、そこで勅許問屋が一括して取り引きを行なう。小売り商人との直接取引は禁じられている。更に、住民の購買力も小さいため、テオドラム国内に入って商売を行なう行商人もほとんどいない。それらに扮して潜り込もうとしても目立つだけである。例外は奴隷商人であるが、クロウと亜人たちの働きによって奴隷商人の活動自体が低迷している上に、そもそもイラストリア王家はこの方面への伝手(つて)を持たない。


 では、冒険者ならどうかというと、モンスターがほとんどいないテオドラムに出かける冒険者は護衛依頼を受けた場合のみで、国境近くの商都までの契約が大半である上、そもそも依頼の件数が少ない。


 こういう八方塞がりの場合には、従魔術師(テイマー)召喚術師(サモナー)にモンスターを送り込ませて探りを入れるのだが、不幸にしてテオドラムにはモンスターがほとんどいない。必然的にモンスターの隠れる場所もほとんどなく、首都までモンスターを目立たぬように送り込むのは不可能に近い。では、召喚術師(サモナー)はどうかというと、(そもそも)召喚術師(サモナー)の多くは戦闘能力に()けたモンスターを優先して使役しており、隠密だの諜報だのというスキルを持つようなモンスターは扱っていない。それに、召喚術師(サモナー)本人が疑われずに侵入するのは困難という条件は変わっていない。



「打つ手無しかよ……」

「講師役の冒険者たちが聞き込んできた情報が手に入ったのは、(むし)ろ幸運でしょう」

「何か方法は()ぇのかよ、ウォーレン」

「今、思いつくのは一つだけですね」

「さっさと話せ」

「贋金作りのエメンを探しているとの触れ込みで、堂々と捜索隊を送り込みましょう。向こうが拒否すれば、代わりに捜索するよう要求できます。その場合も、先方との意思疎通は必要ですから、現場責任者同士の会談を重ねる事になります。聞き込みの機会は増えるでしょう。何より、勅使という形で要求を送れば、首都ヴィンシュタットまではフリーパスで進めます」

「……お前ってぇやつは、本当に嫌らしい手を思いつくよな」

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