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第八十一章 テオドラム 1.テオドラム王城

 王城の一室でテオドラムの国王と軍務卿が差し向かいで話し込んでいる。



「……結局、二個大隊の行方(ゆくえ)は不明なままか……」

「……申しわけございません」

「そなたが謝る筋合いのものでもなかろう……しかし、痛いな」

「イラストリアが動かぬのが幸いですな」

「あの国は、自国が侵略されぬ限りは動かぬよ。それを考えるなら、二個大隊が消えたのがイラストリア侵攻前というのが唯一の慰めよな」



 若い国王が自嘲的に話すのも(ゆえ)無き事ではない。イラストリア侵攻後に二個大隊が消えるような事があれば、テオドラムの立場は決定的に悪くなっていた筈だ。



「消失の原因も、今に至るまで不明か……」

「は……魔族もしくはモンスターの関与が疑われますが……」

「その結論に至った経緯は?」

「単純な消去法です。テオドラムの領内で、飛竜を含む二個大隊の軍勢を跡形もなく消し去るような事ができる存在は、他に考えられないというだけで」

「……対策は?」

「相手の正体が不明な以上、決定的な対策は決められません。ただし、我が軍が対魔獣戦の能力に乏しい事は確かでしょう」

「その改善策は?」

「装備の改良については開発本部に要請を出してありますが、一朝一夕にと言うわけにはゆきません。現時点では対魔獣戦のノウハウを得る事が重要だと考えます」

「……当てはあるのか?」



 ここで初めて軍務卿は困ったように口ごもる。



「当てというか……冒険者を招いてノウハウを吸い上げるぐらいの事しか思いつきませんで」

「だが、我が国にはそもそもモンスターが少ない。対魔獣戦の経験を持つ者も当然少ない筈だが?」

「はい。ですから、他国の冒険者を招く事になります。冒険者ギルドに依頼しても(らち)は明かぬでしょうから、ギルドを通して非公式に他国の冒険者を(しょう)(へい)する事になりましょう。具体的には、我が国の冒険者に他国へ(おもむ)いてもらい、これはという冒険者に話をつけてもらう事になるかと」



 軍務卿の話に半信半疑の様子を見せる国王。



「……そういう()(さん)(くさ)い話に乗ってくる冒険者がいるか?」

「……自分でも無理があるかなとは思っておりました」

(むし)ろ……冒険者個人ではなく、冒険者ギルドに対する講師派遣の依頼の方がマシかもしれん。王国軍からの依頼でなく、冒険者ギルドからの依頼であれば、それほど不自然でもないだろう」

「なるほど……。どこの冒険者ギルドから依頼を出させますか?」

「多ければ多いほどいい。国内の全てのギルド支部に依頼を出させろ。理由としては……王国がシュレクのダンジョン攻略を計画している事にしろ。内部の調査には失敗したが、どのみち放っておくわけにはいかんのだ」

「では、そのように取りはからいます」



 一応の方針が決まったところで、国王が軍務卿に問いかける。



「して、(くだん)のモンスターだが、当然行方(ゆくえ)も確認されておらぬよな?」

「はい……」

「ならば、まだ領内におる可能性もあるのだな?」



 沈黙がその一室を覆った。



・・・・・・・・



 ヴィンシュタットにあるテオドラム王国冒険者ギルドの本部からイラストリア王国の冒険者ギルド本部へ、魔道具による通信――テオドラム王国のギルドへの対魔獣戦の講師派遣の依頼――がなされたのは翌日の事だった。

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