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第八十章 シュレク 3.怨毒の廃坑(その2)

 二人になった男たちは、下りになっている坑道を降りて行く。もうすぐ窪地の底に着くというところで、二人は銘々に頭を振った。まるで頭痛を振り払おうとするかのように。二人のとった行動はそこからが違っていた。剣を()げた男はそのまま坑道を降りて行った。棍棒の男は歩みを止めると、全速力で元来た道を駆け戻った。剣の男は振り返ってそれを眺め、やがて後を追おうとして……そのまま蹌踉(よろ)めいて倒れ伏し、動かなくなった。



『防毒面とやらも酸欠空気には無力でしたね』

『予想どおり、有毒物を濾過(ろか)する機能しか無いようだな。まぁ、ボンベらしきものが見当たらない時点で確信できたが』



 窪地に溜まっていたのは酸欠状態の空気。単に二酸化炭素が多いなどという相対的なものではなく、文字どおり酸素を全く含んでいない空気である。有毒物の濾過(ろか)だけを行なうタイプの防毒面では、酸欠環境を突破する事はできない。酸素欠乏という概念を知らない場合、この酸欠関門の突破は不可能であると考えられた。


 息を止めて駆け戻るという手段で安全圏に逃れた筈の棍棒の男であったが、ここまで通って来た筈の道が見当たらないという事態に直面していた。



『ここはダンジョンなんだからな。道に迷うくらいは想定しておいてもらわんと』



 諦めたように辺りを見回し、新たに見つかった道を進む生き残りの男。周囲を警戒していた筈の男の姿は、しかし突然に消えた……深い落とし穴の中へ。



『落とし穴に対しては、思った以上に無警戒だな』

『坑道内を知っているという自負が邪魔するんでしょうか?』

『だとしたら、予断無く進む冒険者なんかは引っかからない可能性があるか』

『それについては後日の課題という事にしませんか?』

『そうだな。実験体(モルモット)諸君も丁度いなくなったし、今日の試験はここまでで終わりにしよう。屍体と装備を回収してくれ』

『かしこまりました、クロウ様』



・・・・・・・・



「魔石による通信は阻害されたのか?」

「はい。四名が坑道に入った時点で一切の反応が途絶えました」

「内部の状況を探るのは失敗か……彼らが生還する可能性は?」

「残念ながら」

「骨折り損というわけか……せめて試作品の評価ぐらいはしたかったが」

「ですが、魔道による通信が阻害された事で判った事もございます」

「それは?」

「二個大隊が失踪した時の状況、そして、ピットに放った斥候兵が失踪した時の状況と似過ぎています」

「ふむ。という事は?」

「シュレクのダンジョンは自然発生したダンジョンではありますまい。おそらくは以前と様変わりしたという『ピット』のダンジョンと同じように、何者かの意図が加わったものと考えます」

「何者か、とは?」

()(かん)ながらそこまでは。ですが、先ほども挙げた『ピット』のダンジョン、それと、最近イラストリアにできたというダンジョンが何かの参考になるやもしれませぬ」

「うむ……。密かに手の者を送り込むか」

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