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第八章 バレン男爵領 2.通商破壊

バレン男爵領への追い討ちの第二弾として、クロウは通商破壊戦を目論みます。

『領都への攻撃は成功裡(せいこうり)に終わったが、経済的な被害という面ではまだ物足りない。よって次の段階として、バレン男爵領に対する通商破壊戦に移行する』

『マスター、通商破壊って、何ですか?』

『簡単に言うとだな、バレンに限らずあちこちの町や村では、自分たちがつくったものを商人に売り、足りないものを商人から買っていくだろ? そういった商品は商人がよその町や村から運んで来てるんだ。だから、例えばバレンに出入りする商品の流通を止めたら、バレンの住民や、商人から税を取り立てている領主はどうなるかって話だ』


『仕掛ける……場所は……どうしますか?』

『爺さまとも相談して、いくつかリストアップはしてある。後は実際に現地に行ってみてからだな』



・・・・・・・・


『ここの崖を崩すんですか、マスター』

『あぁ。この街道はドランという穀倉地とバレンを結んでいるんだが、この山中では代替ルートがないため、ここを封鎖すればバレンとドランの交通をほぼ完全に遮断できる。しかも道幅が狭く曲がりくねっていて、壊した場合に一番復旧しにくそうなのがこの場所だ』

『ご主人様のご慧眼、ただただ感服つかまつります』

『見通しが悪いから、土魔法持ちは地面の震動に注意して、誰か来るようなら教えてくれ。俺はここの崖をダンジョン化して変形させ、崖崩れっぽくしてからダンジョン化を解除する。それまでの警戒を頼む』

『承知いたしました』

『任せて下さい、主様』



・・・・・・・・



『今度は吊り橋ですか?』

『あぁ、木製の吊り橋だから、手っ取り早く燃やしちまうか』

『はいっ、マスター、僕たちがやります!』

『再建できないように、両岸とも綺麗に燃やし尽くしておけよ』



・・・・・・・・



『ご主人様ぁ、さっきからぁ、何かぁ、不安な臭いがぁ、するんですけどぉ』

『あぁ、この袋の中身か』

『背筋が少々ムズムズするのですが、何でございますか?』

『いつだったか、主様がお一人で採りに行かれたものですよね?』

『あぁ、こいつはドラゴンの便所の砂利だ』

『はぁっ!?』

 俺の言葉に、さすがに従魔たちが口を揃えて驚いた。


『いやな、強い肉食獣の臭いがすると、草食動物は近寄って来ないからな。こいつを街道に()いておけば馬や牛が進まなくなるんじゃないかと……』

『いえ、ご主人様、問題はそこではございませんで……』

『マスター、そんなもの、どこから持って来たんですか?』

『うん? いやな、さすがに俺も心当たりがなくって、精霊樹の爺さまに相談したんだ。そうすると精霊たちが面白がったらしくてな、少し前までドラゴンがいたっていう場所を教えてくれたんだ。そこで小便のしみ込んでいる場所の砂利を採って持って来たってわけだ』

『ますたぁ、便所のぉ、位置はぁ、どうやってぇ、知ったんですかぁ?』

『主様は精霊たちと話せるんですか?』

『あぁ? いや、精霊とは話せないぞ? 単純にそんな場所があったら小石を落としてくれるように、精霊樹の爺さまから頼んでもらったんだ』

『ご主人様、我々をお連れ下さらなかったのは、何故でございますか?』

『いやぁ、ドラゴンの小便の臭いが嫌なんじゃないかと……』


 そう答えたら、うちの子たちのブーイングが酷かった。

 俺を一人でそんな場所へ向かわせるくらいなら、臭いなんて気にならないと口を揃えて抗議した。俺の事を気遣(きづか)ってくれているのは解るから、素直に謝っておいた。


 そんなこんなで問題の砂利を街道の数ヵ所に()いて、さっさと撤退した。



・・・・・・・・



 しばらく様子を(うかが)っていたんだが、領内の交通・通商は各地で停滞しているらしい。とりあえず今回はこれで引き上げよう。次はこれほど簡単にはいかないだろうな。

この話で第八章は終わりになります。次話として挿話を一話投稿します。ちなみに、線路に野生動物が立ち入るのを防ぐために猛獣の臭いを使う事はあるようです。

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