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第七十七章 オドラント 2.試験場の開設

 俺が考えていたのは、クリスマスシティーをこっちに持ってくる時にも使った、「ダンジョン移築」のスキルだ。通路となっている場所の真下から少し離れた場所へダンジョンを移せないかどうか、試してみる価値はあるだろう。


 ……結論を言うと、何の問題もなく移す事ができた。空間を力(ちから)尽(ず)くで入れ替えたわけだから、元あった位置を掘ると土壌の層位が不連続になっているとは思うが……そこまで気を遣う必要はないだろう。


『……閣下(マイ・ロード)のダンジョンマジックとは、まことに破格なものですな……』

『……便利だろうが……』



・・・・・・・・



 実験場を兼ねた工場――試験場とでも言うのかな。それとも研究所か?――として運用するという事で、防音防臭、ついでに魔力漏れの対策を施しておく。地下にあって入り口が無いのだから、換気は必要不可欠だ。それだけに、防音防臭魔力漏れの対策は尚更(なおさら)重要だ。隠蔽(いんぺい)や偽装を考慮した換気口のような細かい作業は、俺のダンジョンマジックでやるには向かない。ここは土魔法使いの眷属(けんぞく)たちに頑張ってもらおう。そう頼むと、ウィンとスレイが張り切ってやってれた。……この二名だけで充分みたいだな。


 細かな作業を二人に任せて、階層の追加やダンジョンの増築、部屋割り――というか部屋の設置――をやっていると、ウィンからの連絡があった。


『主(ぬし)様、ちょっと来て下さい』

 何かあったのか?


 ウィンたちの許(もと)へ急ぐと、そこにあったのは……。


『……焼け焦げた木材か?』

『はい。それに混じって何やら種子のようなものも』

 ……そうか。


『これは多分あれだ。討伐されたというトレントの残骸だな。種子の方はまだ生きているかもしれんが……』

『え? だって、百年以上前の話だって聞きましたよ?』

『驚くには当たらんぞ、ウィン。俺の世界じゃ二千年前のハスの種子が芽を出した事もあるんだ』


 後で生き返るかどうか試してみるか……。



・・・・・・・・



 新たに階層を設置し、既設の空間も拡大して、広々とした部屋を幾つも造っておく。実験施設というのは、将来の設備の追加に備えて充分なスペースが必要だ。


『現時点では……何も無い……空間ですね』

『今は無駄のように思えても、後々増築するのは手間だしな』

『マスターなら、ぱぱっとやれちゃうんじゃないですか?』

『……ぱぱっとやるのが面倒なんだよ』


 部屋の一つは、先日の阻止戦で獲得した兵士とワイバーンの屍体、それらの装備品、食糧などの補給物資、および馬車や戦車を含めた大形兵器、などの収納にそれぞれ充てておく。


『兵士の屍体がまだ結構残ってるな』

『何しろ四千名でしたからな……』

『あちこちのダンジョンに配ったし、ピットのモンスターたちにも配給したんですけどねぇ……』

『ワイバーンの屍体も……まだ残ってるか』

『機関砲で千切(ちぎ)れたものや破損が酷いものは、強化のためピットのモンスターたちに与えましたが……それでも三十頭分以上は残っておりますな』

『ピットのモンスターたち、何か能面のような顔になってたよな……』

『大体……一頭当たり……兵士十名と……ワイバーン半頭の……配当……でした』

『食べ過ぎてなきゃいいんですけどねぇ』



 実のところ、理不尽なまでの椀飯(おうばん)振(ぶ)る舞(ま)いに常識――モンスターなりの――というものを吹き飛ばされたモンスターたちは途方に暮れていたのだが、そういう微妙な点に気が回るクロウたちではない。眷属(けんぞく)たちもいつの間にかすっかりクロウの流儀に毒されていた。



『ダンジョンコアたちも意外に小食だったよな』

『一度に吸収できる量に限界があるって言ってましたよね』

『しかし百人か……もうちょいいけそうな気もするんだが……無理強いするのもよくないしな』

『はい、無理矢理食べさせられても、美味しくないですから』



・・・・・・・・



『ここは蒸溜酒を造る場所なんですか』

『ああ、ポットスチルはまだ増やせるだけのスペースがある』

『主(ぬし)様、あれは何ですか?』

『運搬用の台車だ……乗ってみるか?』


 うちの子たちを台車に乗っけて押してやると、きゃっきゃと騒いで喜んでいた。こういうところは子供っぽいんだよな。


『面白かったですぅ~』

『……でも、手作業で運ぶんですか?』

『ますたぁ、屍体はぁ?』

『あ、そうですよ。折角だから、アンデッドにやらせればいいんじゃないですか』

 アンデッドが造る酒か……。何か臭いそうな気もするが……実際には名案なんだろうな。第一、肝心のビール酵母がアンデッド由来なんだし。ちなみに、増殖したビール酵母――捨てずに回収して保管してある――からは、いつの間にか「アンデッド」という説明が消えていたから、アンデッド酵母の子孫は普通の酵母扱いになったようだ。この件に関しては深く考えない事にする。


『そうだな……屍体も有り余っている事だし、考えておくか』



・・・・・・・・



『ここは……エールを造る場所ですか?』

『俺たちの世界じゃビールとかビアって呼んでるけどな……ウィン、味見は駄目だ』

『うぅ……見つかった……』

『……ったく、次に造るやつはちゃんと味見させてやるから、酒は諦めろ』

『今度は……何を……造る……おつもり……ですか?』

『あぁ、砂糖なんかどうかと思っているんだが』

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[気になる点] つまり、元勇者パーティの中でホニャララしたとして生まれた子供は普通の子供になるのか……
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