第七十四章 新年祭 1.バンクス
日本時間の一月四日。「樫の木亭」の自室にログインした俺は朝食後、去年と同様にお供え物をジェハンさんから受け取る。今日は新年祭だ。大体の流れは去年に確かめてあるから、慌てて出かける必要は無い。早くから出たところで店だって開いてないし、手持ち無沙汰だ。夕方になるまで自室でノンビリと寝っ転がっていればいい。なのに……
『ますたぁ~』
『早く行きましょうっ!』
いや、ライ、キーン、さっき言った事、聞いてたか? 焦って行ったところで開いてる店がだな……
『串焼き、美味しかったですよね~♪』
覚えてやがる……。
あぁ、解ったから! 留守居組も口を揃えて串焼きコールをしなくて良いから!
「済みません、その串焼きを十……いや、二十本ほど貰えますか?」
「あいよっ。兄さん、お使いかね?」
「そんなもんです。食いしん坊の仲間がいまして……」
「ははっ。まぁ、ウチの串焼きは腹にたまるから、精々満腹してくれや」
「そうします」
こんな会話の後で、人目を避けて「洞窟」に転移する。留守居組の三体に、今回はマンション在住のゲートフラッグを加えた総勢六体に串焼きを分けていく。二十本全部じゃない。十五本ほどはクレヴァスに送って皆で分けて貰う。ロムルスとレムスにも送ろうとしたら辞退された。その代わりに今回も映像を送ってくれと言うので、更なる画質の向上を図った新型モニターを渡したよ。食物よりも娯楽……というか、余所の町の新年祭なんて滅多に観る機会がないから、そっちの方を優先してくれという事だった。……まぁ、ダンジョンコアならそうだろうな。
串焼きの他にも美味そうなものや面白そうなものがあったら、その都度出向いて確認する。去年とまるで同じじゃねぇか。……まぁ、年に一度の家族サービスだからな。お父さん、頑張るよ。
図らずも子持ちの気分を満喫(?)していると、ばったり出会ったのがルパのやつだ。
「クロウ、君も来てたのか!?」
「あぁ、ルパもか。随分早いご出馬じゃないか……人の事は言えんが」
「うん。混んでくると色々と煩わしいからな。屋敷の者にも止められている」
……止められている? コイツ、何かやったのか?
「……まさか、些細な事でキレて段平とか振り回したんじゃないだろうな?」
「ま、まさか! そんな事をする筈が無いだろう!」
コイツ……目が泳いでやがる。刃傷沙汰でないにしても、何かやらかしたな。……仕方がない。
『皆、悪いがしばらくルパと廻るぞ。放っておくと何をするか判らん』
『はぁい』
『かしこまりました』
『仕方ないですね~』
『判りました、主様』
『了解……です……』
『(コクコク)』
最後のはゲートフラッグか? ちゃんと言ってる事が解るんだな。何か嬉しい。
「おいルパ。目を離すと何かやらかしそうだから、一緒に回るぞ」
「それは構わないが、クロウ、何かやらかすとは心外だな」
「お前が持ってるそのステッキ……仕込み杖だよな?」
目を逸らしやがった。駄目だコイツ。




