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第七十二章 エッジ村アクセサリー事情 3.村人の意識改革

 クロウ――とホッブ氏――が色々とやらかしたせいで、エッジ村の村人たちは近在に類を見ないアクセサリーを手に入れる事ができた。


 しかし、クロウが彼らにもたらしたものは他にもあった……。



「いやぁ……やっぱしさっきの服の方がブローチに合ってたべよ」

「んだなぁ……こっちにすべっか」

「けんど、そうすっと髪型はどうすんだべ?」

「結い上げた方がよかっぺ?」

「んだなす」



 貰った丸玉に似合う服はどれか。どの色が最も()えるか。この服を合わせるとしたら、髪型はどうするのか。


 村人たちは今まで考えた事のない問題に頭を悩ますようになったのである――村人といっても悩んでいる大半は女性であり、かつ女性のほとんどでもあったが。



「あや、ハンナさぁ、イプテムの花さ植えただか?」

「んだぁ。これなら丁度新年祭の頃、咲くっぺ」

「あや~、ぺっこええ考えだぁ。ハンナさぁの髪に挿したら似合うっぺ?」

「髪飾りったら、ほれ、ヒロさが獲ってきたジッキの尾羽根、ぺっこ綺麗だし、何かの飾りに使えねべか?」



 丸玉だけでなく、他にアクセサリーになりそうなものはないか、使えそうな素材はないか。村人たち――特に女性――が周囲を見る目が変わってきた。


 そう、考え無しのクロウの行動は、エッジ村の村人――繰り返すが主に女性――たちに意識の改革をもたらしたのである。



「あやゃ~、ミルさぁ、そのスカーフ、綺麗にそまっただな~」

「山葡萄の汁で染めてみただよ。食べた後の皮で染めたで、無駄が無ぇだ」



 更に染め物がこの情勢に拍車をかける。羨ましげにミル――正しくはミルドレッド――と呼ばれた女性のスカーフを眺める女性たち。宝石職人のホッブ氏と並んで、染め物職人のミルドレッド女史は、今やエッジ村の重要人物であった。



「おらも染めてみたんだけんど、ミルさぁみてぇに綺麗に染まんねぇで……」

「媒染を変えて試してみただか? 椿の灰と(みょう)(ばん)じゃぁ結構違ってくるで」

「あやぁ~、おら、鉄を使ってただよ」

「鉄じゃ渋くなり過ぎでねぇか? ……あ~、やっぱベットさぁにはちと早いで」



 ベットと呼ばれた若い女性が出したスカーフを見て、ミルドレッド女史は判定を下す。確かに若い女性向きの色ではない。



「それはアグネさぁにでも持ってったがえぇだよ。あっこの丸玉なら丁度ええ具合に映えるで」



 新年祭を前に、エッジ村の女性たちは総出でアクセサリーの準備に余念がなかった。

明日からは本編に戻ります。

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