表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
287/1804

第六十九章 亡命貴族? 7.マナステラ某所

本日更新分最終話です。

 その屋敷の主人は届いたばかりの手紙を前に首を(ひね)っていた。


 今は隣国に帰ってはいるが、手紙の主はかつて共に学んだ友人であり、今も志を同じくする盟友である。その旧友からの問い合わせは、ある意味で困惑させられる内容だった。



(ハンスの一件で巻き添えを食った貴族は他におらんのだから、別件という事になるが……ここ数年で亡命騒ぎがあったなどとは聞いた事が無いのだが……)



 旧友ホルベック卿からの手紙の内容は、テオドラムにマナステラの貴族が移り住んだという噂の報告と、故・クリーヴァー公爵家の誰かがテオドラムに亡命した可能性を問い合わせるものだった。


 しかし、幾ら記憶を辿(たど)ってみても、また、当時の覚え書きをひっくり返してみても、それらしき事実に行き当たらないのである。



(とすると……ドサクサに紛れて(きん)()を盗んだ使用人か誰かが、貴族を(せん)(しょう)しておるのか?)



 そこまで考えて、いやそれはないかと思い直す。クリーヴァー公爵の使用人は、皆信用がおける者ばかりだった。それを()いても、盗んだ(きん)()をこれ見よがしにばらまき、あまつさえ貴族を名告(なの)るなど理に合わぬ。後ろ暗いところがあるなら、目立たないようひっそりと生きる筈だ。



(オットーの手紙だけは要領を得んな……宰相からの又聞きだというし……(やつ)の立場では根掘り葉掘り問い詰めるのも(はばか)られようしな……)



 貴族でもない者がマナステラの貴族を(せん)(しょう)しているのなら、マナステラの臣として捨て置く事はできないが……ホルベック卿からの手紙ではそのへんがどうも曖昧である。単にマナステラから来た金持ちで、地元の者が貴族と勘違いしているだけという可能性もある。下手に騒ぎ立てるとこちらが物笑いになりかねないし、それどころか責任問題にまで発展する危険性すらある。



(それに……我が国の貴族が手に負えぬ子弟をテオドラムに放逐したという事も考えねばならぬ)



 こちらの場合は更に厄介である。何しろ相手が隠したいと思っている事を(あば)き立てる事になるのだから。控えめに言っても相手の感情を逆撫でするのは間違いない。下手をすると抗争に発展する可能性も無視できない。



(何もせんわけにはいくまいが……()(かつ)な聞き込みはできんな)



 今は藪をつつく時期ではない。屋敷の主人はそう判断した。



(いっそ誰ぞをテオドラムに()って、事の次第を確かめさせるか?)



 深夜の自室で屋敷の主人は考え込んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ