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第六十九章 亡命貴族? 5.冒険者

複数更新二日目、本日の一話目です。

 リーロットの町の冒険者ギルドのギルドマスターは、第四大隊からの使いの男を前に困惑していた。



「買い取り価格が金貨数枚以上となる素材を二つほど、買い取り価格の一割り増しで譲って欲しい、ですか……」

「理由について聞かれても、自分には判らないとしか答えられませんよ? 何でも第一大隊からの極秘の(・・・)依頼らしいですが」



 使いの男はわざわざ「極秘の」という箇所にアクセントを置いて答える。余計な事を聞かせるんじゃないと、ギルドマスターは内心で毒づく。



「……で、二つ目の依頼が、それらの素材を託すに相応(ふさわ)しい、口が堅くて信用の置ける冒険者二名、もしくは二パーティの紹介、ですか」

「お願いできますか?」

「聞かされた時点で、拒否はできんのでしょう?」



 使いの男は微笑むだけで何も答えない。ギルドマスターは諦めたように、自分にできる唯一の答えを返した。



「早急に手配しましょう」



・・・・・・・・



「本当にこれを譲ってもらえるのか?」



 ヴィンシュタットの冒険者ギルドで、買い取り担当のギルド職員は何度目かになる質問を繰り返した。その間も、眼は卓上の素材――ギャンビットグリズリーの肝臓と魔石――から離れない。その様子を苦笑しながら眺めて、冒険者の男は何度目かになる答えを返す。



「価格が折り合えばな。で、いくらで買い取ってもらえる?」



 職員はようやくの事で視線を素材から離し、しばらく思案した後に答える。



「二つで金貨十……いや十二……いや十五枚まで出そう。どうだ?」



 冒険者の男は軽く目を見開いて口笛を吹く。予想していた以上――ざっと五割増し――の買い取り金額だ。



「それでいい。というか、随分高く買うんだな?」

「この国じゃモンスターの素材はいつも不足気味でな。特にこんな上物は滅多に入らないんだ。多少高く買っても、充分引き合うのさ。できたらもっと持ち込んでもらえると助かるんだが」

「高く買ってもらえるのは俺たちとしても助かるが……何しろ距離がな……」

「あ~……こればっかりはなぁ……」



 双方満足できる取引を終えた後で、冒険者の男は自分の仲間が待つ酒場の方へ歩いて行った。



(さて……あとはこの代金を、そのまま第四大隊に届ければ終わりだ。妙な依頼だったが、軍資金含めて前金を充分に貰ってるしな。面倒な詮索はしないに限る)



 酒場で待っていた仲間たちに合流して飲んでいると、この国の冒険者らしい男たちが声をかけてきた。



「よぉ、あんたらイラストリアから来たんだってな?」

「あぁ、こっちじゃ随分高く素材を買ってくれると聞いたんでな」

「ま、それはいいんだが……こっちへ来る時、何もなかったか?」

「ん? どういう事だ?」

「いやな。オドラントの辺りにドラゴンか何か出るんじゃねぇかって噂があってな……」



 この話は依頼人に届けるべきだ。そう判断した冒険者の男は、人数分の酒を追加で注文すると、この国の男たちに向き合った。



「面白そうな話じゃねぇか。詳しく聞かせてもらいてぇな?」



・・・・・・・・



「で……結局テオドラムで贋金は見つからなかったわけか」

「ヴィンシュタットとマルクトに派遣した冒険者が持ち帰った金貨銀貨も、こちらの密偵が持ち帰った分も、全部()(とう)なものでしたね」



 第一大隊の屯所(とんしょ)で話しているのは、お馴染みローバー将軍とウォーレン卿である。



「エメンの件は考え過ぎか……ま、それが判っただけでも上等だな」

「それだけじゃありません。ヴィンシュタットに行ってもらった冒険者が、面白い土産話を持ち帰ってくれました」

「ほう?」



 ウォーレン卿は、オドラントで聞こえた奇妙な雷鳴の事、それが聞こえた日時が丁度、二個大隊が行方を絶った時期と重なっている事を報告した。



「……上出来じゃねぇか、ウォーレン」

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