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第六十九章 亡命貴族? 2.イラストリア王城

複数更新二話目です。

「マナステラを追われた貴族の子弟とな?」



 イラストリア王城内の執務室で、国王はもたらされた情報に困惑していた。



「はい。テオドラムに送り込んだ手の者が、ヴィンシュタットで聞き込んだ話です。今のところは噂話の域を出ませんが、一応お耳に入れた方がよいかと」



 質問に答えたのはウォーレン卿。ローバー将軍はその隣に黙して立っている。



「マナステラを脱出したクリーヴァー公爵家の者が他にもおったという事か?」



 宰相の方を見て訊ねるのだが、聞かれた宰相としても困惑するしかない。そこへウォーレン卿が助け船を出す。



「僭越ながら……あくまで未確認の情報です。単にそういう風を装っているだけという可能性も充分あります」

「じゃが……本物という可能性もあるのじゃな?」



 ここでローバー将軍が会話に参加する。



(わし)としては()(きょう)な振る舞いってぇのが気になりますな。密偵の類なら自分から目立つような真似をしたり、殊更(ことさら)に興味を引きそうな話を流したりはしないもんです」

「その点には自分も同意します」

「クリーヴァー公爵家の(ゆかり)の者かどうかは知らず、マナステラからの亡命者の可能性はあるものと考えておいた方がよいかも知れませんな」

「賢明なご判断かと。ただ……」



 三人の男たちは、またかという視線をウォーレン卿に投じるが、それで引っ込む卿ではない。世間の視線なんかに負けるもんか。



「幽霊屋敷の、奇矯な、貴族。三つの条件が揃うと、『人が寄りつかない』という解を導くのは難しくありません。しかも、家屋敷の代金はマナステラの、つまり異国の金貨で支払われたとか」

「……何が言いてぇんだ? ウォーレン」

「贋金作りのエメン一味はまだ捕まっていません」



 イラストリア王国の重鎮たちの話は、妙な方向に進みそうであった。



・・・・・・・・



「わざわざ済まぬな、ホルベック卿」

「いえ、お気になさらず。しかし、老生(ろうせい)の如き者をわざわざお招きとは、何かございましたか?」



 宰相の執務室に招かれたホルベック卿は不審気な表情を隠さない。



「まぁ、座ってくれ。生憎(あいにく)酒肴(しゅこう)は出せぬので、粗茶で申しわけないがな」



 宰相は手ずから茶を()れて、ホルベック卿に振る舞う。粗茶などという割には香りが強い。



「……ホルベック卿の(もと)には、マナステラ王国での貴族の盛衰について何か入っておらぬかな?」



 単刀直入な宰相の質問に対して、ホルベック卿は本気で驚いたような表情を――(かす)かにではあるが――示す。しばし考えてみた後で答えを返す。



「……いえ、クリーヴァー公爵家の件以外にはこれといって」

「ふぅむ……。ならばその件で国を追われた者は? 公爵家以外でじゃが」

「……聞いておりませんが」



 ホルベック卿はますます困惑の表情を濃くしていく。これは本気で知らぬようだと見て取った宰相は、事の次第を打ち明ける事にした。様子を見ようと言う腹づもりもある。



「実はの……未確認じゃが、テオドラムにマナステラより亡命した貴族の子弟がおるとの噂があっての」



 今度こそホルベック卿は仰天した。

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