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第五十八章 王都イラストリア 3.予想外の再会

 パートリッジ卿たちと別れた後、俺たちはそのままぶらぶらと露天を冷やかして歩いた。この時に変装を元に戻しておかなかったのが失策だったと、今ではそう思っている。ただ、結果的に悪かったのかというと、そうとばかりも言えないわけで……。


「おや、こりゃぁ……」

「あぁ、確かバンクスの図書館でお会いした……」


 図書館でシャルド古代遺跡の発掘調査報告書を借りに来た王国軍の兵士二人と再会する羽目になった。出会った以上は当たり障りのない対応をしておかないとな。変な印象を持たれるのは願い下げだ。


「お久しぶりです。そう言えば、王都の第一大隊の方だと(おっしゃ)っていましたね」

「えぇ、今日は久しぶりの非番なので、羽を伸ばしに来たところです」

「そちらさんは? バンクスから何時(いつ)こっちへ?」

 おっと、早速事情聴取か?


「いえ、バンクスには冬越しのために来ていただけですよ。王都に来たのは、まぁ(もの)()()(さん)ですね」

「ははっ、まぁ王都じゃ大した()(もの)もないでしょうが」

「食い物ぐらいですかねぇ」

「いえいえ、田舎者なのでこの賑わいだけでも()(もの)ですよ。しかし……それなら兵隊さんお勧めの観光地というとどこがあります?」


 どこの田舎だ、なんて突っ込まれると面倒なので、先手を打って訊ねてみたんだが、予想外の答えが返ってきた。


「観光地ねぇ……今ならシャルドっていう手もあるか」

「まぁ……興味が湧くかどうかは個人差があるでしょうが、少なくともあんな場所に興味を持つ連中がいるという事自体は、一見の価値があるかも……」

「どういう事です?」


 そこで聞いた話は、完全に俺の想像を上回るものだった。


「エルフたちがそんなに?」

「そりゃあ、この世にこんなにエルフがいたのかって言いてぇぐらいにね」

「獣人もかなり混じっていますが……その彼らがただの遺跡の入口……地下遺跡ですから、入口は本当にただの穴に過ぎないんですが……それを熱心に眺めているんですよ」

「見ているこっちが気味悪くなるくらいにね」

「それはまた……」

「最近じゃそんな観光客を当て込んで、食い物飲み物の露天やら、宿屋の客引きまで出てくる始末でね」

「当初は第一大隊から派遣した部隊で警備する予定だったんですが……混雑が(ひど)すぎて、専門の組織を立ち上げるまでに……」

「専門の組織?」

「まぁ、言ってみれば観光案内所みてぇなもんだけどね。遺跡が遺跡だけに、滅多な者は雇えねぇんで、人選にも手間がかかって……」

「我々がお役ご免になったのはつい最近なんですよ……」


 よほどうんざりしていたんだろう。通りすがりの俺に対して、いや、通りすがりだからこそかもしれんが、二人の兵士は口々に愚痴(ぐち)を並べる。このままじゃ暗い感情が増幅されそうだし、話題を変えるべきか? そう思っていたら、先方から話題を変えてきた。


「それで、そちらはここで何か面白いものはありましたか?」

「面白いというか……不安になる話を聞いたばかりですがね」


 ふむ、さっき聞いたテオドラムの話をリークしてみるか。ニュースソースは匿名のまま、聞いた話として漏らしてみよう。



 テオドラムの話――麦角菌(ばっかくきん)砒素(ひそ)の話――は、いたく二人の兵士のお気に召したようで、真剣な表情で聞いてきた。俺が語り終えると、二人は急用ができたと言って席を立った。


「……そうそう、名告(なの)りもしないで失礼しました。自分はイラストリア王国第一大隊に所属するダールといいます。こっちは同僚のクルシャンク」

「こちらこそ失礼を。自分は旅の者で、クロウと言います」

明日から新章に入ります。

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