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第五十七章 テオドラム 1.テオドラム王国軍中央作戦本部

テオドラム篇の本流に入ります。

「ピットの魔物が強くなった?」



 報告を受けた士官は当惑したように聞き直した。イラストリア王国に関する情報は、何であれ一応確認すべしとは言われているが、これはどちらかというと冒険者ギルドに伝えるべき情報だろう。



「その冒険者ギルドから上がってきた情報なんです。複数の筋から報告されているので、信頼性は高いとか」

「信頼性はともかく、ギルドは何でその情報をこちらに上げたんだ?」

「第一に、我々に対峙(たいじ)する位置に強力なダンジョンが居座る事の問題点を考えたからでしょう」



 確かに、仮想敵国であるイラストリア王国への侵攻ルートの近くに、危険物であるダンジョンが居座っているのは好ましい状況ではない。しかし、所詮はダンジョンだ。不用意に近づきさえしなければ問題は無い筈だろう。



「その答えが第二の理由です。ピットのモンスターはダンジョン内に閉じこもっているわけではなく、ダンジョン外に出て来て冒険者を襲うのだとか」



 なるほど。だとすれば、これは由々しき問題だ。ダンジョンの外で活動するモンスターが増えた、あるいは強くなったという事は、想定している侵攻計画にも無視できない影響を及ぼしかねない。



「そして第三の理由ですが、ギルドはこのダンジョンの強化が偶発的なものかどうかを疑っています」

「……どういう事だ?」

「考えてもみて下さい。イラストリア王国では、昨年の初夏にモローで二つのダンジョンが発見され、その一年後にはシャルドで遺跡となったダンジョンが発見されているんです。更に、その合間には亜人排斥派の貴族が狙い撃ちにされています。貴族の件は()くとしても、一年足らずの間に三つのダンジョンが出現し、今ここで新たなダンジョンが強化された」

「……何者かの意図が働いているというのか……しかし、だとすると」

「えぇ、ピットのダンジョンも他のダンジョンと同じく、一貫した目的のために整備されたのだと考える必要が出てきます。そして、王国中部にシャルドという軍事拠点を確保した後にコレという事は……」

「イラストリアはこちらの動きを読んで先手を打ってきたか……」

「相手が王国なのか、王国に(くみ)する別の何者なのかは判りませんけどね」



 現時点でのシャルドの遺跡は、軍事拠点どころか観光地としての整備が進んでいるような状況なのだが、ここにいる軍人たちはその事を知らなかった。


 また、ピットのダンジョンは確かにテオドラム王国からの「侵入者」を撃退する目的でクロウによって整備されたのだが、そこでターゲットにされた「侵入者」とは、山を荒らす「奴隷狩り」や、その護衛としての「冒険者」であって、イラストリア王国への「侵攻軍」ではない。


 しかし、テオドラム王国軍の面々には、テオドラムの侵攻に備えてイラストリアが用意した迎撃拠点、そうとしか見えなくなっていた。



「どうしたものかな?」

「まずは斥候を派遣しましょう。ピットのダンジョンがどれほどの規模でどれほどの戦力なのか、確かめるのが先決です」

第五十四章第六話に出てきた火追いの狩りの話は、この士官には通っていません。あれは国家戦略にも関わってくる話なので、もう少し上のレベルでないと知らされません。軍部以外で知っているのは、冒険者ギルドのギルドマスターくらいです。

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