第五十五章 クリスマスシティー 1.旅立ち
クロウがやらかした中でも特大の案件。その顛末記です。
(……どうしたもんかなぁ)
巡洋艦クリスマスシティーのダンジョン化を解除できない事に気づいてから、既に十日近くが経っていた。その場の乗りと勢いでレストアしたものの、さてこの後どうするかという段になってみると、結構八方塞がりな事に気がついたのである。思案投げ首の挙げ句、打開策を見つける事ができなかったクロウが、問題を先送りする事にした。しかし、そうやって現実逃避を決め込むのもそろそろ限界になってきた。なので腹を括って件の元・巡洋艦――現・ダンジョン――の許へやって来たのだが……
自らがダンジョンとして蘇らせた元・巡洋艦を目の前にして、クロウはやはり頭を抱えていた。
(このまま深海に放っておくのも無責任だし、かと言って地球で乗り回していいもんじゃないし、異世界に持って行ければ何とかなるんだろうけど、それはさすがに無理だろうし……)
全長百八十六メートル、基準排水量一万千八百トンの巨艦など、洞窟に運び込めるわけが、いや、それ以前にマンションのクローゼットに持ち込めるわけがない。クロウはそう考えて、ふと、心の奥底では難しくなさそうだと感じている自分に気がついた。そこはかとなく嫌な予感がしたクロウは、久々に自分のステイタスを見てみることにした。
【個体名】クロウ 烏丸良志(からすまる・ながゆき)
【種族】定義不能 唯一無二の存在
異世界からこちらの世界に移動した際の衝撃で、たまたまダンジョンコアと融合した異世界人。融合したダンジョンコアがまだ未熟なものであったため得たスキルは少ないが、その後の度重なる異世界間移動に伴って身体に膨大な歪みを蓄積した結果、常識外の魔力を保有するようになった。ただし、現時点では一部を除いて魔法スキルを得ていないため、魔力の使用は制限された状態にある。
【地位】ダンジョンの支配者
【レベル】38
【ユニークスキル】「壊れたダンジョン」 レベル33
★自分を起点とした半径百メートルの範囲内に任意にダンジョンを設置できる。設置できるダンジョンの規模は術者のレベルに依存する。
★自分で設置したダンジョンの内部を瞬時に移動できる。
★自分で設置したダンジョン間にダンジョンゲートを設定する事で、ダンジョン間を自在に移動できる。
★自分で設置したダンジョン内に任意の地点から瞬時に移動できる。
★ダンジョンの内部構造を任意に変更できる。
★ダンジョンコアを生成および育成する事ができる。
★ダンジョン壁と同様の能力をその身に纏う事ができる。
★ダンジョン内外の任意の場所でモンスターを召喚および送還できる。召喚できるモンスターの種類は術者のレベルに依存する。また、召還後にモンスターを強化できる。
★ダンジョン内外でアンデッドを使役できる。同時に使役できるアンデッドの数および活動範囲は術者のレベルに依存する。
★屍体などの素材からアンデッドを自由に作成・強化できる。
★召還したダンジョン壁の材質を任意に変更できる。変更できる範囲は術者のレベルに依存する。
★任意の場所に任意の形でダンジョン壁を召還し、これを操って攻撃に用いる事ができる。召還したダンジョン壁には属性魔力を付与できる。召喚できるダンジョン壁の規模および召喚位置は術者のレベルに依存する。
★支配下に置いたダンジョン内の任意の空間に属性魔力を放出し、攻撃に用いる事ができる。放出できる魔力の強さは術者のレベルに依存する。
★任意の場所にダンジョンを召喚できる。召喚できるダンジョンの種類とレベル、および召喚位置は術者のレベルに依存する。
★ダンジョンを操縦できる。ダンジョン内に居座ったまま、ダンジョンを任意の場所に移動させる事ができる。移動中もダンジョンとしての機能は損なわれない。
★ダンジョンを移築できる。支配下にあるダンジョンを一旦格納し、新たな場所で展開できる。移築できるダンジョンの規模は術者のレベルに依存する。
★術者が空間魔法を会得している場合、ダンジョンを異空間に収納できる。
【スキル】異言語理解 鑑定 従魔術 眷属強化 念話 風魔法 錬金術 空間魔法
(うん……前回からこっち、色々とやらかしたもんな……そりゃあレベルも上がるよな……)
気を取り直したクロウは、ダンジョンの移築と異空間への収納という二つの新スキルに着目した。これらのスキルを使えば、たとえ一万二千トン弱の巨艦といえども、異世界に持って行く事ができそうだ。ただ、巡洋艦をそのまま異空間に収納した状態で異世界に運ぼうとすると、半端じゃない魔力を消費するようだ。移築スキルで一旦「格納」した状態で異世界に運び、しかる後に「展開」する方が、必要魔力量は小さくなるみたいだな。
ともあれ、クリスマスシティーを異世界に運び込むのは、何とかなりそうだ。
明日はお披露目です。




