表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
212/1805

第五十四章 新たなダンジョン 2.ダンジョンマスター~使役~

行き掛かりで、新たな人材と勢力を指揮下に置く事になりました。

『しかし……もろに頭に食らっていたが、知性とか記憶とか大丈夫なのか、こいつ?』



 超音波攻撃をもろに頭に、しかも二方向から十字砲火よろしく食らった魔族の屍体を前にして、クロウは首を(ひね)っていた。アンデッド化して使役するにせよ、記憶を探ってデータを得るにせよ、脳がグズグスに壊れていたんではまともな反応は期待できないんじゃないか、そう思えてしまうのである。



『まぁ、ここで悩んでいても仕方がない。試してみれば判る事だ』



 思い切りよく死霊術を使い、魔族の屍体をアンデッド化してみたが、アンデッドとして蘇った男は問題なく命令に従った。脳の損傷――常識的に考えて脳が重大な損傷を負ったのは確実――はアンデッド化に際して問題なく復元されたようだ。とりあえず、ここを割り出した経緯(いきさつ)について訊ねてみる。


『シャルドの遺跡とモローのダンジョンを結びつけたのは想定内だったが……』

 そこからの展開は予想外だった。



 魔族の男――ダバルと言う名で、予想通りダンジョンマスターだった――の推理の過程を辿(たど)るとこうなる。


 シャルドの遺跡とモローのダンジョンが関係しているのは事実としても、モローのダンジョンが直接にシャルドの封印遺跡に対峙していると考えるには距離がありすぎる。してみると、七百年前の建造者は、他にも遺跡を残していたのではないか。そうして、モローのダンジョンはその未知の遺跡に対して造られたのではないか。



『……よくもそんな事を思いつくよなぁ……』

『ですが……言われてみればそれなりに説得力があります』

『同じような考えを持つやつが現れないとも限らんのがなぁ……』


 ダバルが着目したのは、現在の景観だった。

 

 シャルドの封印遺跡に関わったエルフは、森を離れて荒れ地に出て来たように思われているが、シャルドは七百年前にも荒れ地だったのか? 当時は荒れ地じゃなかったかも知れない。何かが起きたせいで荒れ地になってしまったのかもしれない。ともかく、当時のエルフがシャルドにいたのなら、当時のシャルドと似たような環境の他の場所にも進出していておかしくない。その場所を特定するための手始めは、現在のシャルドの環境――荒れ地――に似ている場所を調べる事だ。そう考えたらしい。 


 で、どこの荒れ地かを特定するために、ダバル(こいつ)が打った手というのが……


『冒険者ギルドに潜り込むとはまた大胆な事を……』


 そう、ダバル(こいつ)は情報の面で出遅れたのを自覚していたから、手っ取り早くビハインドを埋めるために、先行する人間たちから情報を得ようと考えた。さすがに王国上層部に接近するのは無謀と考えたらしく、まずは王国軍の動きを探ってみたが、モローとシャルド意外に目立った動きは見られない。そこで、王国軍に先んじて何らかの情報を掴んでいるとすれば冒険者ギルドだろうと当たりを付けて、まずはモロー最寄りのエルギンの冒険者ギルドに潜り込んだところ、彼らがクレヴァス近辺に興味を持っていたのを知ったわけだ。


『……で、この近辺にも遺跡かあるんじゃないかと考えたところで……』

『唯一の岩山が怪しいと睨んだ、と言う事ですか……』

『半分はまぐれ当たりみたいなもんだが……しかし、調査の実行能力は見るべきものがあるな。案外拾いものかもな、こいつ』


『しかし……ドラゴンの気配を探りだす魔道具などというものがあるのですな』


 それだ。ダバル(こいつ)、自分のダンジョンにドラゴンをリクルートしようと考えていたらしい。あんな中二病を捕まえてどうするつもりなんだか……。


『いえ……ご主人様の……評価が……辛口な……だけでは』

『手っ取り早く戦力の増強を図るのなら、悪くない選択と思いますが』


『……まぁ、そんな魔道具を使われたら、ドラゴン二頭を(ほふ)ったクレヴァス(ここ)が引っかかるのも当然か……後で魔道具の仕組みを調べて、対処方法を検討する必要があるな』



『それで、マスター、この魔族のダンジョン、どうします?』

『うん? ダバル(こいつ)の調査能力は使えそうだからこのまま使役するが、別にダンジョンまで()らんだろ? 放って置いてもいいんじゃないか?』


 そう答えたら、うちの子たちから駄目出しの嵐だった。


『えぇ~っ!? 折角手に入れたのに、勿体ないですよ~』

『ダンジョンマスターを討伐しておいて、ダンジョンを放りっぱなしというのは、いささか無責任ではないかと……』

『ますたぁ、拠点、増えますよぉ?』

(ぬし)様、南には拠点って無かったですよね?』

『動きの自由を……確保する上で……拠点が増えるのは……好都合です』


 ぬぅ……しかしなぁ……他人が造ったダンジョンの面倒までみるのは……。第一、そのダンジョンに行ったとして、簡単に手に入るものなのか?


『クロウ様は既に肝心のダンジョンマスターを隷下におかれているので、何も問題はないかと』


 はぁ……まぁ、行くだけ行ってみるか。

クロウが相手では残念な結果になりましたが、ダバルはダンジョンマスターとしてはかなり優秀な部類に入ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ