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第五十四章 新たなダンジョン 1.ダンジョンマスター~襲撃~

新展開です。

『妙な男が(たたず)んでいる?』



 クレヴァスのレブからの通信は、再びクロウたちを困惑させた。クレヴァスと妙な男の取り合わせは以前にもあった。あの時の「妙な男」は魔族であり、無謀にも単身王国軍に喧嘩を売って返り討ちにあったのだが……。



『レブ、今度のやつも残念……かどうかは()いといて……魔族っぽいのか?』

『魔族っぽいかどうかは正直判りかねますが、少なくとも(かた)()じゃありません。今のところは何をするでもありませんが、何か危ない感じがします』


 とにかく現場を見てみないと始まらないという事で、俺たちはクレヴァスに転移したんだが……。


『……確かに危ないやつっぽいな』

『こっちをじろじろと眺めて、一人で納得したように(うなず)いてますね……』

 そう、一人なのだ。


『こないだの残念君の兄ならダンジョンマスターの筈だよな。何で一人なんだ?』

 護衛無しで外に出るって……何を考えているんだ?


『向こうなりの事情があるんじゃないですかぁ?』

『モンスターが……頼りに……ならないとか?』

『そう言やぁ、こないだのオルトロスとキメラは……ちょっとなぁ……』



 クロウたちは勝手な事を言っているが、実はあのオルトロスとキメラは、(くだん)のダンジョンマスターの配下では最大戦力であった。魔術師であるダンジョンマスターが外に出向いた場合、あの二体まで連れ出すとダンジョンの守りが(こころ)(もと)なくなってしまうので、留守番として残したのである。


 護衛を不要と考えるほどには、この魔族(ダンジョンマスター)は自分の力に自信を持っていた。



『うん? 何か腹を(くく)ったようだな?』



 その若い男は、にやりと(わら)うとやにわに魔法で攻撃してきた。ダンジョンの壁はその魔法攻撃をものともしなかったが、その代償として、クレヴァスがただの岩山でない事も露見した。

 男は再びにやりと(わら)う。偽装を見破ったと考えているのだろう。



剣呑(けんのん)なやつだな。だが、これで敵対者である事は確実になった。各部戦闘用意!』



 魔族の男は興味深げにクレヴァスに近づく。割れ目の中に目を()った男の視界の隅に、何かがふわりと動くのが映った。興味を引かれたように男は割れ目の壁に頭をつけて中を覗き込む。そして……



『……随分あっさりと片付いたが……本当に死んでるのか?』

『……死んだのは間違いありませんけど……拍子抜けしましたね……』


 クレヴァスの入口や内部の壁には、超音波発振機の役割を果たす魔石が多数埋め込んである。侵入者が壁に頭をつけたり(もた)れ掛かったりした場合には、近い位置にある魔石が――時には壁の中を適切な位置まで移動して――強力な超音波を一気に浴びせて敵を(たお)すわけだ。前回クレヴァスに来た魔族が入口の壁に張り付いていた姿を見て考案した兵器なんだが……。


『こいつ、前に来た変な魔族の兄ってやつか? 行動様式が似てるんだが……』

『あのウィスプに魅了されたんだと思います。クロウ様の策が当たりましたね』


 そう、入口の壁に超音波発振機を埋め込んだ時点で、確実に頭を岩壁にくっつけさせる方策を考えた。この発振機だと射程が短く、ほとんど急所に接触していないと致命傷は与えられないからな。そこで考えたのが、入口を覗き込むような体勢をとらせる事だった。そのためにクレヴァスの内部を漂うウィスプに魅了の能力を与えてみたんだが……想像以上に上手くいったな。



 クロウの独白を補足しておくと、今回クロウは確実性を期すため、二つの発振機を使って二方向から十字砲火のように頭部を狙い撃っていた。いかに魔族といえど、脳がグズグズに壊れているのは疑いようがなかった。



『とにかく、死んだんならさっさとダンジョン内に取り込もう。色々と知りたい事もあるしな。場合によってはアンデッド化して手駒に加える』

本章以降、新たな舞台としてイラストリア王国の南方がクローズアップされるようになります。

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