第五十二章 対空戦力 1.対空兵器の選定
クレヴァス防衛のために、クロウが(彼の視点では)久しぶりに自重をかなぐり捨てます。
二匹目のドラゴンを始末した際にレブから指摘された危険性――高速機動する飛竜による飽和攻撃――は、一刻も早い対処が要求される性質のものだった。現在装備している二十センチ砲は威力の点では申し分ないが、速射性という点ではいささか問題がある。多数の飛竜の飽和攻撃があった場合にどう対応するか、予め考えておく必要はあるだろう。
まずは現用の二十センチ砲を利用する案として、旧日本軍が採用していた三式弾の開発がある。しかし、実用レベルの三式弾を開発するに当たっては、前提条件として炸裂弾の開発が必要になる。近接信管の必要性は言わずもがなだ。この世界の魔法でどうにかなるか、検討する必要があるだろう。
第二に、速射性の高い砲を新たに開発する方法がある。地球世界の海軍が採用しているような単装速射砲――五インチ砲すなわち百二十七ミリ砲や、スーパーラピッド砲の異名をとった七十六ミリ砲――だが、飛竜相手には少々力不足の可能性があるか。実際、二十センチ砲でもドラゴンを即死させるには至らなかったしな。弾の形状を変えて炸裂弾にすれば威力は上がるだろうが……悩みどころだ。
第三に、一発の威力よりも弾数で勝負する案がある。地球世界でCIWSとかファランクス、ゴールキーパーなどと呼ばれている機関砲の実装だ。要はバルカン砲なわけだが、こっちはこっちで構造的にかなり複雑になりそうな気がする。
そして、全てのケースに共通する課題として、流れ弾や体内への残留弾をどうするかという問題がある。人道がどうこうの問題じゃなくて、地球世界のオーバーテクノロジーの証拠を残す事の危険性が問題なんだが。……発射後、一定時間を経過すると消滅するような砲弾って作れないかな……あぁ、時限式の炸薬弾頭にすればいいのか。これは何とかなるか。
……これは他のみんなの意見も聞いた方がいいかもしれんな。
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『と、いうわけで、皆の意見を聞きたい』
『ならば早速言わせてもらうぞ。モローにせよクレヴァスにせよ、あの狭い迷宮に飛竜の軍団を差し向けるような事があり得ると、正気で思うておるのか?』
爺さま……そこは正気でなく本気と言って欲しかったな……。
『迷宮内への侵入でなく、単に破壊するための攻撃だってあり得るだろう? その可能性がある限り、俺は準備に手を抜くつもりはないぞ』
『むぅ……そう言う事か。……では、その件については納得したが、要は一発の威力と速射性のどちらに重きを置くかという話かの?』
『あぁ、大体そう考えてくれて間違いない』
『クロウ様、速射性というのは具体的にどれくらいですか?』
『挙げた中で最も速射性の低い百二十七ミリ砲で毎分十五発から三十発、最も速射性に優れる二十ミリ機関砲だと毎分千発から三千発だな』
俺が上げた数値を聞くと、皆、黙りこくってしまったんだが……どうかしたか?
『……多過ぎじゃ、馬鹿者……』
まぁ……俺も確かに三千発は要らんと思うが……。
『……ご主人様、どこかの国が持っているという噂の飛竜騎士団でも確か百五十騎ほどで、二百騎はいなかったように思いますが……』
『五分程度で壊滅ですね♪』
『いや、さすがに百二十七ミリ砲弾一発でケリがつくかどうかは判らんだろ? 相手が散開して襲って来た場合、速射砲一基でどれだけ追随できるかは疑問だしな』
『ま、まぁ、相手が国軍とは限りませんし……魔族だとか、モンスターのスタンピードの可能性もありますから……』
『ですが……そこまでの……速射性となると……機構的にも……複雑なのでは?』
まぁ、そうだよな。
『実物があればいいんだが……』
ん? 実物?
もう一話投稿します。




