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第三百十二章 特命調査員ラスコー、マーカスへ 9.迷走!ヤルタ教(その6)

 さて……何やら()く解らないうちに、()(くず)しに先史文化研究のスポンサーという地位に就いた――もしくは就かされた――ヤルタ教上層部であったが、彼らは彼らでこの展開に頭を抱えていた。


 マクリーヴが思いがけないネタを拾い、ルイジがそれを更に掘り下げた結果、ヤルタ教は古代マーカス帝国仮説とやらにズブズブと()まり込む仕儀(しぎ)と相成った。

 しかし――それはそれ、〝ダンジョンと黄金に(まつ)わる与太(よた)(ばなし)の真偽を探るべし〟という教主の命はまだ果たされぬまま残っている。これを放置しておくというのは、無論できない相談である。


 マクリーヴとルイジの二人は現状動かせそうにない以上、代わりの者を派遣するしか無い。無いのだが……()りとてハラド助祭を派遣するほどの大事(おおごと)ではないし、取り敢えず誰か()()きの者を派遣しようという事になった――のはいいが……



「人選は後で考えるとして、どこに派遣するべきか……」

「悩むほどの選択肢があるのか?」



 繰り返すが、教主・ボッカ一世の命というのが、〝テオドラム・マーカス・マナステラの三国が関わっている、ダンジョンと黄金に(まつ)わる与太(よた)(ばなし)の真偽を探って来い〟というものであった。

 このうちマーカスでは思いがけない厄ネタを掘り出してしまった訳だし、それに絡んで人員も二人ほど派遣している。この国にこれ以上のマンパワーを投入する必要は無いだろう。


 残り二ヵ国の片割れであるテオドラムだが、(そもそも)この指示自体が、テオドラムの意図を探るために提案されたものなのだから、ここでテオドラムを調査先に選ぶというのは本末転倒な気がする。


 となると、残りはマナステラ以外に無いではないか。



「調査の『対象』としてはそのとおりだ。自分もそれに異を唱えるつもりは無いよ」

「だったら何を……」



 ……と、そう詰問しかけた男も、これが内在する問題点に気が付いた。



「そうか……マナステラか……」

「そう。マナステラだ」



 マナステラはノンヒュームの庇護者を以て任じているような国であるから、(かつ)て「善導」の名の(もと)にノンヒュームを弾圧していたヤルタ教との仲は(すこぶ)る悪い。もはや「鬼門」とか「天敵」とか言うべきレベルであるから、そこにヤルタ教の手の者を()(かつ)に派遣するなど悪手の極みである。

 つまり……


「……マナステラへ入国する事無く、マナステラの情報を探らねばならん訳か」

「それが望ましいという事になる」

「うむ……」



 手先を送り込むのが難しいとなれば、既にマナステラ国内にいる者をこちらに引き込んで、新たな手先として使うしか無い。

 そして、現状でこちらに引き込めそうな者と言えば、〝金鉱目当てにマナステラへ行った冒険者〟というのがその最右翼だろう。


 ――ただし、それにはちょっとした難点があった。



「当然と言えば当然だが、その〝金鉱目当てにマナステラへ行った冒険者〟が現在いるのもマナステラなんだ。つまり、彼らとコンタクトを取るためには、マナステラに潜り込まなきゃ始まらん訳で……」

「問題は何一つ解決していない訳か……」



 思わず難しい顔で(つぶや)いたのだが、



「いや、〝何一つ〟という訳ではない」

「何だと……?」

「何か打てる手があると言うのか?」



 何か手段があると言うならさっさとほざけ――と、言い出しそうな同僚たちに苦笑を返すと、



「要はマナステラから出国した冒険者を当たればいい……という事になる」

「それは……理屈の上からはそうなるが……」

「どうやって探し出すつもりだ?」



 雲を(つか)むような、或いは(わら)の山から一本の針を探し出すようなものではないか?



「商業ギルドに問い合わせる手を考えている」

「商業ギルド……?」



 ここで男がものした提案というのは、少し前にボックが採ったのと同じ手段であった。してみると、商業ギルドの情報管理が金次第というのは、その筋には割と知られた事実なのかもしれぬ。


 ともあれ、他に名案も迷案も無い事とて、商業ギルドに問い合わせたところ、返って来た答えというのが、



「ほほぉ……懐の温かそうな冒険者の二人組?」

「中々有望そうな二人組ではないか」



 クラブとペスコの地元冒険者コンビの出国情報であったから、報告を聞いたヤルタ教本部が色めき立ったのも無理はない。しかし――



「確かに有望そうなんだがな、()(さい)な問題が一つある」

()(さい)な……問題?」

「何か好からぬ予感がするが……聞かせてもらおうか」

「あぁ。そやつらの出国先というのがイラストリアなんだ」



 しれっと返って来た答えに、担当者たちは交々(こもごも)(うめ)き声を上げる。()りにも()ってイラストリア? マナステラに負けず劣らずの大鬼門ではないか。

 折角光明が見えたというのに、その光明のあるのが地雷原の真っ只中という事実に打ちのめされる一同。



 そんな彼らの(もと)に、ボックとデックの二人組がマナステラを出てテオドラムへ帰国の途に就いた――という朗報が届くには、今少しの時間が必要であった。

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