第三百十一章 変転「カタコンベ」 8.カタコンベ裏コース(その4)
「お、おぃボック……それって……」
「あぁ、魔石……みてぇだな」
『おー、首尾好くドロップ品の魔石を手にしたか』
これで、「カタコンベ」では魔石がドロップし易いと気付いた筈。このまま魔石採集に血道を上げて、その成果をテオドラムに持ち帰り、冒険者どもを嗾してくれれば万々歳。
そう決め込んでいたクロウであったが、
『マスター、あいつら、恐がって逃げたりしませんか?』
『〝最初は軽い相手〟の筈のサンドシンカーに、あれだけ苦戦していましたからねぇ』
確かにキーンとウィンの言うとおり、小兵である筈のサンドシンカーを相手取って、思った以上に苦戦していた。ダンジョンアタックの経験がほぼ無いという事を考えても、あそこまで手子摺るとは予想外……
『予想外でも何でもないわい。あれだけ魔石を与えて強化しておれば、あのくらいの結果は予想して然るべきじゃ』
『世間一般の「サンドシンカー」とは、もう全然別物よね』
元々がそれなりのモンスターであったせいか、「フェイカー」の修飾詞こそ付いていないが、ペテンじみているのは間違い無い。警戒した二人が撤退を選ぶという可能性も、無いとは言えない状況になっていた。
『…………まぁ、最低限ここの噂を持ち帰ってくれればいいと割り切ろう』
諦観に囚われつつあったクロウであるが、そんな辛気くさい空気を吹き払うように、
「よぉしっ! そうと知れたからにゃ先へ行くぞ!」
――なんて景気の好い台詞を当のボックがぶち上げたものだから、コアルームで視聴しているクロウたちも驚いた。現場のデックは言わずもがな。
「ボ、ボックよぉ……」
「落ち着けって。俺だってな、何の根拠も無しにこんな事を言やしねぇよ」
「そ、そうなのか……よ?」
これは聞き捨てにできない話だと、クロウたちも思わず耳を欹てる
「お前は気付かなかったか? さっきのサンドシンカー、どいつもこいつも狙いが妙に甘かった」
「そ、そう言われれば……」
「俺が思うにな、やつら、人間を相手にした事が無ぇんで、勝手ってもんが解ってねぇのよ」
「な、成る程……」
『おぉ……そういう解釈になる訳か……』
『モンスターが手加減するなんぞ、普通なら考えもせんじゃろうからのぉ』
『妥当と言えば妥当な結論よね』
「だとしたら――よ、やつらが人間相手のやり方に慣れる前に、事を済ませちまった方が良いだろうが」
「こ、事を済ませる?」
「あぁ。このまま先へ進んで行って、手早くサンドシンカーどもを狩っちまおうって寸法よ」
「待ってくれ! 何でそんな事になんだよ!?」
『……この弟分は何を騒いでるんだ?』
『獲物が……学習する前に……狩りを行なう……当たり前の事のように……思えますが……』
『だよなぁ』
ボックの提案よりも寧ろ、デックの反応の方に首を傾げるクロウたちであったが、程無くその疑問は解消された。……新たな驚きとともにであるが。
「最後のサンドシンカーが暴れた時に、魔石が飛び出して来たじゃねぇか。ありゃ、砂の中に埋まってたもんが、暴れた拍子に穿り出されたに違ぇ無ぇ。なら、同じようにサンドシンカーどもを痛めつけてやりゃ、同じように魔石を掘り返してくれるかもしれねぇだろうが」
「はぁっっっ!?」
目を剥いて魂消るデックであるが、モニタールームのクロウたちも同じであった。何でそういう結論になる?




