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第三百十一章 変転「カタコンベ」 2.大勝負(その2)

 ニヤリと笑ったボックが話を続けるところでは、



「あのラスコーってやつの話に()りゃあ、お宝が出てからかれこれ()(つき)以上は経ってるってのに、当局からの公式発表が無ぇそうだ。って(こた)ぁ……」

「……って(こた)ぁ?」

「……これが根も葉も無い与太(よた)(ばなし)か、或いは……」

「あ……或いは?」

「……当局の発掘作業が進まなくて、公表できる段階に至ってない――って事になる。つまり、俺たちが付け込む隙がある」

「お、おぉ……」



 何やら面白そうな話になってきた。デックも思わず身を乗り出す。



「そして――その隙に付け込もうとするなら、こっちもそれなりに急ぐ必要がある。……仮令(たとえ)そのために飛竜を使う事になっても、な」

「な、成る程……」



 ボックが唐突(とうとつ)に飛竜云々(うんぬん)などと言い出した理由については理解できた。しかし――その意見を支持するかどうかはまた別の話である。

 お宝の噂が曖昧(あいまい)模糊(もこ)としており、当局が何ら詳細な情報を公表していないという事は、場所の目星の着けようが無いという事ではないか?



「いいかデック? ()(つき)を過ぎた今になっても国だの何だのが動いてねぇ、もしくは動くのが間に合わねぇって事は――だ、これが当局の予定外だったって事を意味している。つまり――お宝をめっけたのはフリーの冒険者だって事になる」

「冒険者……」



 論理展開には飛躍があるが、事実を言い当てているのが面白い。この辺りがボックのボックたる所以(ゆえん)である。

 だが、発見者が冒険者である事が、場所の特定に役立つのか? 冒険者ギルドが場所を把握しているとでも?



「そうじゃあねぇ。(そもそも)マナステラって国に冒険者が集まったなぁ、金鉱の噂が原因だろうが」

「あぁ……」



 当の〝金鉱の噂〟というのはテオドラムがその発信地であるから、その辺りの事情についてはボックもデックも詳しい。二人はテオドラムの出身である。



「冒険者の移動について冒険者ギルドが把握してんなぁ当然だが、それと同じくれぇに情報を把握してんのが実は商業ギルドだ。商人が冒険者を護衛に雇う以上、商業ギルドだって冒険者の事を知っていなくちゃ話にならねぇからな」

「な、成る程……」

「で――だ。冒険者ギルドの方は情報の管理もしっかりしてんだが、商業ギルドは……あそこは〝あの世の沙汰も金次第〟ってところがあるからな。情報を抜くのは遣り方次第って事よ」



 ボックが明かす商業ギルドの裏事情に、デックは目を丸くするばかり。



「お宝を(かね)に換えた野郎どもが、のんべんだらりとそこに居続けてるたぁ思えねぇ。さっさとトンズラしたに決まってるから、ここ()(つき)ばかりの間にマナステラを出てったやつがいりゃあ、そいつがホシに決まってる」

「な、成る程……」



 実際にはクラブたちはその裏を掻いて、ゆるりとマナステラに滞在する気でいたのだが……他ならぬ「迷姫(まいひめ)」リスベットの活躍によって、早々に国を出る羽目になったのはご承知のとおりである。



・・・・・・・・



 そして――清水の舞台から飛び降りる気で飛竜便に乗り、僅か五日後にマナステラ南部の町リンツに到着した二人が、一月(ひとつき)以内にマナステラを出国した冒険者として訊き出したのがクラブとペスコの名であり……

 


「二人とも所属はランスだが、アヤワト村の辺りを主な狩り場にしていたようだ」

「アヤワト村……ねぇ」



 それは「カタコンベ」への(みち)(しるべ)となる地名であった。


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