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第三百五章 湖の秘密~第二幕~ 7.マーカス国務会議(その2)

 仮に砂金が発見されなかったとしても、テオドラムとの仲は確実に悪化する。

 最悪なのは〝マーカス領内では砂金が発見されず、テオドラム領内でのみ発見された〟場合であり、下手をすると即開戦なんて事にもなりかねない。お世辞にも仲良しとは言えないテオドラムであるが、両国ともそこまでの事態は望んでいない。



「理想的なのは、砂金の有無を事前に確認してから対応を選ぶ事だろうが……」

「どうやって確認するというのだ? 不幸にして我が国の側では、『(いざな)いの湖』は(もっ)()注目の的になっているのだ。この状況で斥候兵を送り込んだりすれば、あそこに何かがあると声高(こわだか)喧伝(けんでん)するようなものだぞ?」

「夜間に人目を避けて送り込むのは難しいか?」

「昼夜を問わず、あの岩海を突破するのは至難の(わざ)だ。仮に突破できたとしてもだ、月明かり星明かりの(もと)椀掛け(パニング)などできると思うか?」

「【点灯(ライト)】の魔法もそれほど長くは()たんし、揺らめく松明(たいまつ)(あか)りで探すのは(こく)だろうな」

「あー……すまん、無理があったな」



 ……という()()りの結果、テオドラムの献策どおりに立ち入りを制限するのが最善だろうとの結論になったのだが、その口実に苦慮しているというのが現状なのであった。



「……まぁ、『湖』が『岩窟』と繋がっている事さえ知られなければ……いや、最低でもその傍証(うろこのこと)さえ(かく)(おお)せれば、(きん)の亡者どもの参戦は阻止できるだろう」

「今でさえ釣り馬鹿と馬鹿貴族の圧を(かわ)すのに手一杯なんだ。これ以上の面倒など願い下げだぞ」

「うむ、確かに」

「だが……具体的にどうするつもりだ? いや、できるできないは別にしても、どうするのが最善手なのだ?」

「うむ……」

「そこだな、問題は」



 最悪、民間人の釣り馬鹿たちは〝お上のご威光〟で黙らせるとしても、レムダック家を筆頭とする仮説信奉派の貴族たちはそうもいかない。体制派貴族家の足を引っ張らんものと、あれこれ難癖を付けてくるに決まっている。それをどうやってあしらうか。



「下手な手を打つと、商業ギルドが又候(またぞろ)おかしな動きを始めかねんぞ?」

「あぁ……そっちもあったか」



 何しろマーカスの商業ギルドは、「岩窟」内で砂金鉱床が発見される以前から、その存在を予測していた明敏家(笑)揃いだ。目の付け所と推論の過程が噴飯(ふんぱん)ものだったとしても、結果的に事実を見通した事になっているのは事実である。



「……と言うかだな、根拠も推論も論外なのに、結果だけは言い当てる……など、(まじな)い師か占い師と変わらんだろう」

「その分厄介だとも言えるがな」



 そんな〝占い師〟が「(いざな)いの湖」に目を付けた日には、(ろく)でもない事になるのは目に見えている。



「理想的なのは、あの湖を『入らずの地』扱いにしてしまう事なんだが……」

「どういう理由で立ち入りを制限する? 怪魚の事を大っぴらにすれば、釣り馬鹿どもが奮い立つのは目に見えているぞ?」

「それに、ダンジョンとの繋がりを疑われても(まず)いだろう」

「……イスラファンで起きたという化物行列のようなのが再現できれば……」

「アレは人の手でどうこうできるようなものではあるまい」

「とすると……他に目を()らさせるというのが次善の策か?」



 次善の策のアイデアは出たものの、それを具体化させる手立てが思い付かない。う~むと(うな)る一同であったが、



「……単なる思い付きに過ぎんのだが……」

「何かあるのか?」

「あるんならさっさと出してくれ。実施の可否は皆で考える」

「うむ……諸君らは『ロスト・ダンジョン』仮説というものを聞き及んでいるか?」

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