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第四十七章 ヤルタ教の周辺 2.ヴァザーリ伯爵領冒険者ギルド

シャルドの遺跡の発見は、思わぬところにも影響を及ぼします。

 このところヴァザーリの冒険者ギルドは、シャルドで新たに発見された遺跡の噂で持ち切りだった。少なくない冒険者たちが、あの夜(・・・)ヤルタ教の教会を襲ったスケルトンドラゴンを目にしているのだ。聖気を(まと)ったアンデッドモンスターに、やはり聖気を(まと)ったダンジョン――ダンジョンである事は、彼らの間では確定事項となっている――の遺跡。両者が無関係な筈がない。

 そして、スケルトンドラゴンがヤルタ教を襲った事と、王家がダンジョン遺跡を我が物にしようとしている事。これらを考え合わせると、王家がヤルタ教排除に乗り出したのはもはや確実。

 更に、ヤルタ教の新たな教義を考えに入れると、悪神バトラ・スケルトンドラゴン・王家の三者が徒党を組んで、ヤルタ教に対抗しているように見える……。


 結論。王家は悪神バトラの手先である。



 単なる類似性を相関関係の証拠と見なし、更にそれを論理の飛躍で味付けして出来上がった「お話」であるが、ヴァザーリの冒険者には信憑性(しんぴょうせい)の高い話に思えた。



「……王家はヴァザーリを潰すつもりなのか?」

「どこまでやる気かは知らんが、このまま放っておくとも思えんな」

「王家がダンジョンを手にしたって事は……あのスケルトンドラゴンを自由に動かせるようになったと見ていいのか?」

「考えたかぁねぇが、ありそうな話にゃ(ちげ)ぇねぇ」



 王家が「ダンジョンの遺跡」を手に入れたのは、ひとえにⅩに対する抑止力を期待しての事である。その思惑の中にヴァザーリは含まれていない。しかし、そもそもⅩの存在を知らぬ住民には、王家の狙いはヴァザーリとヤルタ教だと思われた。



「そもそも王家は、何でシャルドに目を付けたんだ?」

「確かに何年か前にゃ結構なお宝が出たって話だが、それからこっち、(てえ)した物ぁ出て()ぇ筈だ。今になってシャルドに目を付けた理由が判らん」

「やっぱり、前回の発掘で何か手掛かりが見つかってたんじゃねぇか?」

「だとしたら、何で今まで何もしなかった?」

「やっぱ、最近になって知ったんじゃねぇか」

誰から(・・・)聞いたんだろうな?」



 彼らの間では、悪神バトラと王家の繋がりは、もはや確定事項となっていた。



「……王家は悪神バトラの力を手にしたが、教会はヤルタ神のお力を得る事ができたのか?」

「教主様がお選びになった勇者が、アンデッドにボコボコにされてたろうが」

「その後の進展はないのか?」

「あったら今頃は教会が鳴り物入りでまくし立ててる筈だろうが」

「……俺たちは神に見捨てられたのか?」

「教会は何をしているんだよ……」



 ヤルタ教が行なった宣伝は、ブーメランのように戻って来て、ヤルタ教自身を傷つけようとしていた。

明日も本章の続きになります。

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