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第三百三章 王女様のお望み 3.イラストリア王国 国王執務室(その2)

 ウォーレン卿の見立てに〝ふむ〟――と(うなず)きつつも、将軍は敢えて反論を試みる。



「仕込みとしちゃあ馬鹿貴族を一人(そそのか)すだけ。駄目元でやるにゃあお手軽で安上がり――って思ったのかもしんねぇぜ?」

「仕込みの先がどこへ転がるか予想できないんです。下手をすると、これまでのⅩの仕込みを全て台無しにしかねません。あの(したた)かなⅩが、〝安物を買って銭を失う〟ような愚策を採るとも思えません」



 ……Ⅹことクロウの評価が過大であるような気もするが、取り敢えずクロウが濡れ衣を着せられるような事態は回避できたようだ。

 ウォーレン卿の結論が各人を納得させたところで、(おもむろ)に国王が口を開く。



「さてそうするとウォーレン卿、Ⅹは今後どのように動くと思う?」



 国王直々(じきじき)のご下問を投げかけられたウォーレン卿は、今度こそ困ったような表情で言葉を返す。



「……正直、それが読めません。現在の状況はⅩにとって好ましいものではない筈。そこまでは解るのですが、それに対してⅩがどう出るのかは……」



 予想される(クロウ)の反応は大きく分ければ、①「このまま静観を決め込む」と、②「事態の打開を図って何らかの行動を起こす」の二つしか考えられない。①については問題無いとして②の場合である。



「これに関しても考えられるのは二つ。騒ぎを(あお)るか鎮めるかです。Ⅹにとって、騒ぎを(あお)る事で得られるものは無い筈。となれば鎮める方向に動くのでしょうが……その方法がまるで見当付きません」



 「古代マーカス帝国」仮説という与太(よた)(ばなし)を相手取る以上、何からのカウンター・インテリジェンスを仕掛けるのだろうとまでは想像できるのだが、



「……自分に思い付けたのは、ただ一つだけでした」

「「「ただ一つ――?」」」



 不穏な予想を立てさせたら右に出る者は無い――という評価が固まりつつあるウォーレン卿の〝ただ一つ〟とは?

 固唾を呑んで見守る三人に向かって返された答えは、



「えぇ。今以上の大騒ぎを引き起こして、『古代マーカス帝国』仮説を霞ませる……それぐらいしか思い付きません」

「「「………………」」」


 

 幾ら何でもそれは無いだろうと言いたいが、何しろ相手はあのⅩ。(かつ)て「災厄の岩窟」で、あわや世界大戦を引き起こそうとした――註.イラストリア側視点――稀代の黒幕である。マーカス一国を混乱に陥れるぐらいはやってのけられるだろう。



「ただ、それだとⅩの立場からすると、本末転倒なものになる筈です」



 そりゃまぁ、マーカスの混乱を鎮めるために、それ以上の厄ネタで吹っ飛ばすというのだ。輪を掛けた混乱になるのは誰にでも判る。



「それを考えると、可能性の高いのは静観だと思いますが……それを積極的に支持する根拠が見つからないというのは……」



 消去法で得られた結論であるだけに、今一つ自信が持てないという事らしい。



「……て事ぁアレか? (わし)らも(だんま)りを決め込んでた方が得策か?」

「余計な差し出口は出さないのが上策でしょうが、目と耳は(しっか)り働かすべきでしょう。何らかの形で情報収集は続けるべきだと愚考します」

「ふん……ダールとクルシャンク(あいつら)を派遣するか?」

「いえ……ここまで話が大きくなっている以上、(むし)ろ正式な問い合わせの密使を送った方が良いかもしれません」

「ふむ……マルシングのやつに一働きしてもらうかの」

「それが宜しいかと」


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