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第三百一章 マーカス騒乱節 或いは 魔女の小鍋 9.第三の男 或いは 二度ある事は三度ある

 さて、善は急げとばかりに王都マイカールを出立したハンスたち一行であるが、王都からモルヴァニアとの国境まではかなりな距離がある。という事はつまり、雲隠れする土地にも不自由しないという事であって、



「そこまで焦ってトンズラしなくても、大丈夫だったんじゃないのか?」



 ――という意見も出てこようというもの。

 確かに、現状だけ見ればカイトの意見にも一理あると思えるのだが、



「問題は、その〝安全に雲隠れできる土地〟の心当たりが無いって事なのよ」

「へ?」



 いや……だから王都から国境までの間に、無難そうな土地なら幾らでも……といいかけたカイトに、噛んで含めるようにマリアが説明する。



「いい? 人里離れた僻地は今や、貴族たちの調査隊が彷徨(うろつ)き廻ってるの。いつどこで()(くわ)すか判らないし、()(くわ)したら()(くわ)したで、他の貴族の間諜と誤解されるかもしれないのよ。そんなのは願い下げでしょう?」

「お、おぉ……」

「人混みに紛れるって意味じゃ王都は都合好かったんだけど、マナステラから訊き込みに来てるようじゃ、他に誰と()(くわ)すか判らないし」

「イラストリア第一大隊の二人とかな」

「ご主人様が会ったっていう、アムルファンの商人とかですね」

「そりゃ……確かに面倒だな」

「それ以外の小さな町はどうかって言うと、短期間の滞在なら大丈夫だと思うけど……」

「あー……長逗(ながとう)(りゅう)すると目立っちまう可能性があんのか」

「そういう事」



 そうなると、最終的な目的地は隣国モルヴァニアの国境沿いだとして、そこまではあまり人目に付かないようなルートを選んで動くしか無い。


 ――と、話が決着しそうになったところで、これに異を唱えたのがハンスであった。その(いわ)くところに拠れば……



「精霊門の候補地はモルヴァニア側で探すとしても、レムダック家の取って置きが出たっていう洞窟。あれが噂どおりダンジョンなのかどうかと、その位置は確かめておいた方が良くないですか?」



 精霊門の開設適地もダンジョンの発生適地も、魔力や魔素が集まり易い場所という共通点があるのなら、ダンジョンもしくはその跡地の分布情報は、精霊門の候補地を探す上でも重要ではないかと言い出したのである。

 ……その本音は〝問題の洞窟遺跡とやらを見てみたい〟というところにあるのだとしても、指摘する内容に誤りは無い。



「懸念があるとすれば、調査隊に絡まれる可能性くらいなんでしょう? けど、既にレムダック家の『成果』が(おおやけ)になっている以上、(むし)ろレムダック家としては業績を誇示する事を望むんじゃないですか? だったら、現場に近付くのは無理でも、遠目に見るとか話を聴くぐらいの事はできるんじゃ?」



 この指摘もまた妥当なものと思われた事で、行きがけの駄賃に一つ、噂の〝レムダック遺跡〟とやらを拝んで行こうじゃないかと話が(まと)まった。

 そして、現場の位置を確認する事と、関係者から――幾許(いくばく)かの(わい)()と引き換えに――簡単な話を訊く事には成功した。

 それだけなら〝めでたしめでたし〟で終わったのだろうが……



(「おぃ……あれ……」)

(「ん? あの冒険者が何……どこかで見たような顔だが……はて?」)

(「ん~………………あっ! あいつヤルタ教の下っ端じゃないか!?」)

(「「「「ヤルタ教!?」」」」)



 冒険者に身を(やつ)しているマクリーヴの姿が、カイトたちに目撃された瞬間であった。


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