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第三百章 新任助祭の奮闘~マーカス篇~ 6.お告げの地へ(その2)

 てっきり発掘調査にも参加するものと思っていたが……と、マクリーヴが意外の念に囚われていると、その冒険者が苦笑しながら説明してくれた。それに拠ると……



「何だかな。新たなお告げが降りてきた――とか何とか(のたま)ってよ。〝ここは任せる〟みたいな感じでトンズラこいちまった」



 その口振りから、この同僚もあの霊感師を()散臭(さんくさ)く見ていた事が知れたが……要はボロが出る前に跡白波(あとしらなみ)を決め込んだという事らしい。撤退の手際の良さから察するに、これは既定の方針であったようだ。



「……穿(うが)った見方をすれば、現場が国境沿いという事も……」

「あぁ、逃亡(トンズラ)を容易にしようっていう魂胆(こんたん)があったのかもな」



 だが、早期の離脱が霊感師の計画のうちだったとしても、



「貴族の旦那が()く手放したな?」



 遺跡発見の功労者として囲い込むんじゃないかと思っていたが、



「あー、それか……どうもな、発見の手柄を独り占めしたかったみてぇでな」

「あぁ成る程……待て、という事はつまり……?」



 既にめぼしいものが発掘されたという事か?



「あー……それなんだが、ちょいと妙な按排(あんばい)でな」

「妙?」

「出土の状況とかがな、ちいっとばかり――よ」



 発掘作業の経験が少しばかりあるというその男によると、まるで発見される事を想定して、誰かが埋めたかのような(わざ)とらしさが感じられたそうだ。ちなみに、発掘チームの参加者にも、出土状況の不自然さを指摘する者がいたという。



「ただなぁ……これにも理由が付くっちゃ付くんだよなぁ」

「……と、いうと?」

「あぁ。俺の見るところ、この洞窟ぁダンジョンの跡地みてぇだ。今風に言やぁ『ロスト・ダンジョン』ってやつだな。こりゃ、他のやつらも同意見だがよ」

「ダンジョン……跡地?」

「あぁ。洞窟の奥に下へ続きそうな道があったが、崩れてて通れなかったそうじゃねぇか。そいつが〝下層への通路〟ってやつよ」

「はぁ……」



 目まぐるしく変わる新展開に、マクリーヴも()いて行くのがやっとである。

 密命から遠離(とおざか)っているかのように思われた現状だが、ここへ来て「ダンジョン」という要素が現れるとは。



「しかし……ここがダンジョン跡地だとすると、何か問題があるとでも?」

「問題っつーかな……」



 そう前置きして、何とも複雑な表情を浮かべながら男が語ってくれたところに拠ると、



「まずな、占い師殿のご託宣(たくせん)に拠ると、ここに難民が流れ着いたなぁ大昔。それこそイラストリアの封印遺跡と同じ頃じゃねぇかって話だ。となると、事の順番から言って、その難民がここを捨てたかおっ()んだかした後で、洞窟がダンジョン化した公算が大きい。ここまではいいな?」

「あ、あぁ」

「とすると――だ、古代人とやらの遺物は、一旦そっくりダンジョンの腹に収まったって事になる。この時点で出土状況なんてもなぁ、綺麗さっぱり吹っ飛んでらぁな」

「な、成る程……?」

「その後でダンジョンが死んだか討伐されたか……ともかくその後で、ダンジョンが溜め込んでたものが放り出された訳だ。ごっそり(まと)めて――な」

「……その後で自然と土砂に埋まったとすれば、一般的な遺跡の出土状況とは一致しない……成る程、筋は通っているようだ」



 要するに、第三者が見れば黒寄りの濃灰色なのだが、ガセと言い切るには根拠が弱いという事らしい。仮説の信奉者はそこを()いて反論するだろうから、水掛け論に終始する可能性が高いという。



「ま、俺たちにゃ縁の無い話だがな」

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