表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1738/1807

第三百章 新任助祭の奮闘~マーカス篇~ 1.軽い気の迷いから

 究極の上司であるボッカ一世直々(じきじき)の命を受けて、〝テオドラム・マーカス・マナステラの三国が関わっている、ダンジョンと黄金に(まつ)わる与太(よた)(ばなし)の真偽を探る〟羽目になったヤルタ教のマクリーヴ助祭は、イラストリアのサウランドを()った後、経費節減のために涙ぐましくも徒歩での移動を続け、単身国境を越えてマーカスに入っていた。

 マクリーヴ自身は特段マーカスに用事は無く、目指すは飽くまでマナステラなのだが、サウランドからマナステラへ向かうのには、一旦マーカスに入るのが手早いのである。

 あとはまぁ……各地各国の密偵が結集しているイラストリアを通るのは遠慮したいという事もあった。一応冒険者に身を(やつ)してはいるが、どこの誰にどう面が割れているのかなど判らないのだ。危険な場所は避けるのが、情報職の心構えというものである。


 ニーダムの状況観察を目立たない程度に済ませると、マクリーヴはマーカスの王都マイカールを目指(めざ)した。人の流れ的にそうするのが自然だという事もあるが、折角マーカスまで足を伸ばした以上、王都の様子を探っておきたいという思いもあった。


 そして……その結果としてマクリーヴは、(いささ)か奇妙な――ぶっちゃけて言えば卦体(けったい)な――事態に巻き込まれる事と相成った。


 ……それは、マクリーヴが王都の冒険者ギルドに――情報収集のため――顔を出した事から始まった。



「貴族の護衛依頼? ……はてね?」



 一応は冒険者に身を(やつ)してはいるが、それは飽くまで世を忍ぶ仮の姿。依頼を受ける必要など無いのであるが、それでもなおマクリーヴが興味を引かれたのには理由があった。



「貴族主催の学術調査に護衛が必要なのは解るが……何でこんなに多いんだ?」



 言うまでも無くこれは、マーカスのお調子貴族レムダック卿が引き起こした、時ならぬ遺跡探索熱のせいなのであるが……神でもマーカスの貴族でもないマクリーヴに、そんな裏事情が解る訳も無い。盛大に首を(ひね)ったものの、それとなく耳を澄ませていた甲斐あって、どうやら(くだん)の〝学術調査〟というものが、古代遺跡の探索らしいと察する事ができた。


 ――それなら話は別である。


 マクリーヴが受けた密命は、〝テオドラム・マーカス・マナステラの三国が関わっている、ダンジョンと黄金に(まつ)わる与太(よた)(ばなし)の真偽を探れ〟というものであった。護衛依頼と学術調査のどちらの内容にも、「ダンジョン」或いは「黄金」というキーワードは出て来ないが、その代わりに浮かんで来た「古代遺跡」という単語は、「ダンジョン」や「財宝」といったパワーワードと無関係ではない。いや(むし)ろ――



(時期的な暗合(あんごう)を考えると、無関係だと安直に切り捨てるのも何だかなぁ……)



 一路マナステラへ(おもむ)いて、新発見の古代遺跡とやらの様子を探るつもりでいたのだが……ここでこうして新たなネタに()(くわ)したからには、このネタを追ってみるのも一興だろう。何、どうせマナステラの古代遺跡とやらは、別に逃げ出したりはしないのだ……多分。


 ――という判断の(もと)マクリーヴは、ギルドに出されていた護衛依頼の一つを手に取った。



(ふぅん……レムダックとかいう貴族の(きも)()りか。場所は……ありゃ、マーカスの南部を調査するってなってるな)



 マーカスの様子を少し探った後、北上してマナステラへ行くつもりであったのが、逆に南下する事になりそうだと知って、マクリーヴは渋い表情を浮かべる。

 が……



(けど……一旦決めた事を早々に反故(ほご)にするっていうのも、何だか気分が悪いしな。少しくらい遠廻りになっても構やしないだろう)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ